第3章 真央霊術院編
「…よく頑張ったね。怖かっただろう。もう大丈夫だ。後は我々に任せて、休んでいるといい。」
「無茶しはったなぁ。血だらけやん、そない頑張らんでええよ。終わるまで寝とき。」
「あ……。」
「ゆうり!」
頭に浮かんだ疑問が消えた訳では無かった。けれど市丸のあやす様な優しい声音に、ぷつりと緊張の糸が途切れゆうりの身体はゆっくりと倒れる。寸前で檜佐木が受け止めたが、彼女の顔は青白く、呼吸も荒い。
助けたい、守りたいはずだったのに、自分が助けられてしまった。あまりに痛ましい姿を見て悔しさと情けなさに唇を噛み締める。
「クソ……ッ!!」
藍染と市丸の力は圧倒的だった。十数体居た虚達は彼らの剣に敵わずあっという間に斬り伏せられる。見ていた1回生達はあまりの強さに息を呑む。これが、隊長と副隊長…。
全てを倒し終えた後、藍染と市丸はゆうりを抱え呆気に取られている檜佐木の元へと歩み寄った。
「すまないが、彼女はこちらで預かろう。その怪我では刻を争う。院で可能な治療範囲を越えている。直ぐに四番隊へ連れていかなければならない。」
「俺も一緒に行かせて下さい…!」
「君も怪我しとるやろ、院で手当して貰い。ゆうりはボクが連れていくわ。」
「でも…。」
「わからん子やなぁ…。」
食い下がる檜佐木の言葉を無視して市丸はゆうりの身体をそっと抱き上げる。既に気を失っている彼女はただ青白い顔で眠っているかのように静かだ。
「好いとる女も守れんキミにゆうりは預けられん言うとるんや。」
「っ……!」
笑顔で告げられた言葉がまるで鉛のように重くのしかかった。彼の言葉に間違いは無い。檜佐木はそれ以上言い返せる言葉も無く、ただ俯いて拳を作る。
「……ゆうりを、よろしくお願いします…。」
「勿論だ、必ず助けるよ。君たちも檜佐木くんと共に院に戻りなさい。」
「はい!」