第3章 真央霊術院編
細く鋭い爪が3方向から檜佐木に向けて伸ばされた。とても1人では防ぎ切れない。瞬歩で移動しようにも、ゆうりも出血が多過ぎたのか虚を斬り伏せた後上手く着地も出来ず床へ崩れ落ちる。始解させた斬魄刀も、元に戻ってしまう。
その時だった。
ガガガガッ!!
「…お前ら……!!」
虚の爪が檜佐木を貫く事は無かった。逃げたと思われた雛森が下から、阿散井が右から、吉良が左から襲って来る爪を所持していた浅打で上手く受け止めたのだ。
予期せぬ助っ人に一瞬ゆうりは言葉を失う。
「申し訳ありません!命令違反です!!」
「助けに来てんだから見逃せよな、先輩!!」
「"君臨者よ"!"血肉の仮面・万象・羽搏き・ヒトの名を冠す者よ"!"焦熱と争乱""海隔て逆巻き南へと歩を進めよ"!破道の三十一!!赤火砲!!」
雛森の詠唱付きで唱えられた破道は激しい爆音を立てて檜佐木を襲った虚へ当たった。仮面を捉えた赤火砲はもくもくと黒い煙を上げる。威力は確かにあった。手応えも感じた。
「よし!!」
「……いや…」
「増え、てる…!!」
赤火砲が当てられた虚は死なず、空から更に大量のヒュージホロウが現れた。2桁にも上るであろう虚達が空を覆う。暗い夜空を白が埋める恐ろしい光景に雛森、吉良はリアルに迫る死を感じ瞳に涙を滲ませた。
「嘘だろ…!?」
「う…嘘だ…こんな…いやだ、死にたくないよ……。」
「皆、逃げて…!!」
少しずつ迫って来る虚。ゆうりはボロボロの体に鞭を打ち瞬歩を使って4人の前に立った。始解もされていない斬魄刀を構え、虚を睨む。
「……誰も、殺させない…!」
「よせ、逃げるぞゆうり!!」
檜佐木の静止も聞かず虚へ向かい飛び出そうとした矢先。斬撃がゆうりの横を通り過ぎ目の前の虚を真っ二つに裂いた。凄まじい威力の攻撃に振り返る。
「ひゃあ、こら大層な数やなぁ。」
「…待たせて済まない。救援に来たよ。」
「あ…ああ…あなた方は…!!五番隊…藍染…隊長…!市丸…副隊長…!!」
檜佐木が震えた声で紡ぐ。ゆうりは2人の姿に目を見開いた。藍染さんが、五番隊隊長…?真子さんは…!?
彼女の様子に気づいた藍染はゆうりの肩をぽんと軽く叩き雛森の頭を撫でた。市丸はゆうりの背中を濡らす血に瞳を覗かせ眉間に皺を寄せる。