第3章 真央霊術院編
「嫌よ、ここで逃げたらみんな死ぬかもしれない。」
檜佐木は焦った。何故ヒュージホロウがこんな場所に現れたのか、馬鹿でかいこいつらの霊圧を感じ取れずにいたのか、そもそも防壁はいつ突破されたのか…分からないことが多すぎる。
兎に角今は悩んでいる時間は無い。彼は喉元に着いている通信機のスイッチを押した。
「尸魂界へ救援要請!こちら6回生筆頭檜佐木修兵!!現世定点1026番北西2128地点にてヒュージホロウの襲撃を…」
そこまで言った所で、檜佐木の真横からもう一体の虚が現れた。やはり、霊圧は感じなかった筈なのに。まさか霊圧を消せるタイプの虚…!?兎に角引かねェと殺られる…!頭はやけに冷静に、尚且つ迅速に回る。けれど体が着いて来ない。細く鋭い爪が振り上げられ彼の顔を額から頬までを掠める。
「修兵!」
「来るな!!」
傷口は浅くも額は皮膚が薄く血管も多い。多量の血がとめどなく伝う。直ぐに駆け寄ろうとしたゆうりは檜佐木に止められビクリと体が跳ね上がる。
しかし、ゆうりは再度力強く奥歯を噛み締め立ち上がった。背中が焼けるように痛い。生暖かい血液が太腿から足まで伝って気持ちが悪い。それでも逃げる訳にも、膝をついてる訳にもいかない。
腰に掛けていた斬魄刀を抜く。両手で構え、目の前に居る蟹沢を襲った虚を睨み付けた。
「魅染めろ。胡蝶蘭!!」
解号と共に刀身をなぞると彼女の斬魄刀の刀身が白い花弁になって散り、新たな形を形成する。その刃は白く、彼女の身長よりもずっと長い。
ゆうりはその場から飛び上がった。
「はぁッ!!」
抑えていた霊圧を解放し、両手で斬魄刀を持ち振り上げてから思い切り振り下ろす。長い刀身から放たれる白く巨大な斬撃は虚の仮面だけでなく体ごと縦半分真っ二つに切断した。
初めて見るゆうりの斬魄刀と、解放された霊圧の重くのしかかる様な感覚に檜佐木は目を見開いた。こんなにも浅打は形を変えるのかと。そしてこの少女は普段これだけの力をを隠し持っていたのかと。しかし檜佐木自身、人を気にする余裕など無かった。滴る血で片目の視界は奪われ、当然痛みも有るがそれでも虚が律儀に待ってくれるワケもない。細い爪のようなものを何本も持った虚は彼に襲いかかる。
「修兵、前!!」
「クソっ…ナメんじゃねェッ!!」