第3章 真央霊術院編
ゆうりは瞬歩で一度に移動出来る距離を伸ばし、檜佐木は使える鬼道自体を増やす努力を重ねる。
日が暮れ始めた頃、2人は鍛錬を終え並んで寮へと足を向けた。
「明日は魂葬の実習だっけ?遅刻しないようにしないと。」
「現世に向かうのは久々だな。」
「楽しみだね〜。」
「馬鹿、遊びに行くんじゃねーんだぞ。現世はここと違って虚に出会う確率もゼロじゃねぇ。」
「防壁張ってくれるんじゃなかった?」
「それでも警戒する事に越したことは無いだろ。1回生共の面倒見なきゃならないしな。」
「…そうだね。」
目的地に着いたゆうりと檜佐木は別れを告げてそれぞれの寮へと戻った。
自室の扉を開くと、蟹沢は既に着替えておりちゃぶ台の上で何かを書いていた。帰宅したゆうりに気が付くとヒラヒラと手を振る。
「おかえりゆうりちゃん。」
「ただいま!何作ってるの?」
「明日のグループ分けの紙よ。それより、檜佐木くんとどうだった?」
「あ…ごめんね1人でやらせちゃって。手伝うよ!どうって…ちゃんと鍛錬して来たよ!」
「ありがとう!そうじゃなくて…何も無かったの?」
「……何も無いよ?」
「えー!?もうすぐ皆バラバラになっちゃうし、折角2人きりにしたのに……檜佐木くんって本当奥手だわ!」
蟹沢の反対側に座ったゆうりは明日グループ分けに使用する為3枚1組で同じ絵を描く。ドクロのマークだったり、死神のマークだったり2人で被らないように作り続けた。
「私も彼氏欲しいなあ。死神になったら良い感じの人居るかな…。」
「死神って今3000人も居るんでしょ?1人くらい居るよ。ほたるちゃんはどんな人がいいの?」
「そうだなぁ…カッコイイのは当たり前として、強い人がいい!守ってくれそうじゃない?」
「隊長とか副隊長とか?」
「それはちょっと恐れ多いわ…。ゆうりちゃんは?結局どんな男がいいの?」
「そうだなぁ…私より強くて、優しい人。」
「檜佐木くんピッタリじゃない?」
「確かに、優しくて強いもんね。でも、今は卒業試験とか控えてるし、やらなきゃならないこともたくさん有るから。死神になってやる事全部終わらせてから恋愛に関してちゃんと考えたいな。」
「しっかりしてるねぇ。」
「不器用なだけだよ。」