第13章 破面編(前編)
腕を振り下ろす形で無理矢理氷を砕く。鎧でも纏っていたかの如く厚い氷もヤミーの怪力の前は何の障害にもならないらしい。2人が戦いを始める中、ゆうりを解放したルピも綾瀬川と戦闘を始める。とはいえ、斬魄刀を抜いた綾瀬川と比べ、ルピは刀を抜くこともしない。元々本質が虚だからか、硬質化した腕でも充分に彼と渡り合えるようで長い袖口を揺らして挑発する。
「だーかーらァ、1対1じゃ勝ち目ナイって言ってんじゃーん。わかんないの?」
「…うるさい…っ!」
「キミからもなんか言ってやんなよ。そろそろホントに殺しちゃうよ?」
「2対1は趣味じゃねぇ。」
「あァっそ!めんどくさァ。」
額に傷を負い膝を付く綾瀬川にゆうりの表情が曇る。近くで見ている斑目は彼に加勢するつもりは無いらしい。十一番隊らしいといえばらしいが。
本当ならば直ぐにでも死神側に助力したい。しかしそんな事をここですれば、藍染は現世に更なる十刃を送り込み兼ねない。…もどかしい。ここに居る、ただそれだけの事がこんなにも苦しいものだとは思わなかった。
「ヤミー!そっちの子もボクに譲ってよ!こいつらウダウダめんどいからさ。一気に4対1でやろーよ。ボクが解放して、まとめて相手してあげるからさ。」
そう言うとルピは己の斬魄刀に手を掛けた。ゆっくりと引き抜く様に緊張が走る。
破面による斬魄刀の解放。それにより驚異的なまでに能力が向上することを、日番谷達は既に知っていた。
「させるか!卍解!!"大紅蓮氷輪丸"!!」
「縊れ。"トレパドーラ"。」
「ちっ!」
日番谷が卍解してルピへ一直線に向かうと同時に、彼は死神の真似事の如く、斬魄刀を解放して見せた。
白い煙が立ち上がり、ルピの姿も見えない中バシュッ、と風を切る音がする。日番谷は反射的に1度動きを止めて刀の鋒を彼に向けた。
すると直ぐに、太く硬い、それでいて柔軟な蔦のようなものが1本、無防備な彼へと襲い掛かり、ドンッ、と硬質なもの同士がぶつかる鈍い音と氷が削るような乾いた音が辺りに響き渡る。日番谷は、彼の攻撃を氷の翼で防いだのだ。
「…どうした、こんなもんか?解放状態のてめぇの攻撃ってのは。」
「 ハハッ!よく防いだね!…でも正直止められるとは思わなかったな。意外とやるもんだね、隊長クラスってのは。でもさ、もし今の攻撃が──8倍になったらどうかなァ?」
