第13章 破面編(前編)
…尸魂界にはまだ時間が必要だ。戦うための準備が。
万が一、今すぐここにいる十刃を連れて現世に向かわれては対処が出来ない事は目に見えている。この前ウルキオラ達が現世に来た時のように、大きな被害を出す事は許されない。
「殺せとは言わないよ。君にそれが出来ない事は分かっている。ただ、そこに居るだけでいい。それだけで、十分な効果が期待出来る。」
「……分かった。」
「いい子だ。ワンダーワイス、彼らについて行きなさい。」
「アー……。」
「待ってよ、ウルキオラ。ボクも一緒に行かせて。なんか面白いこと起きそうだし?」
「俺も行くぜ。この前の奴らを全員ぶっ殺してやる!」
「…好きにしろ。」
予め用意されていた服をワンダーワイスに着せてから踵を返したウルキオラの後ろをゆうり、ルピ、ヤミー、ワンダーワイズの4人が歩く。その数歩離れた位置にはグリムジョーも居た。どうやら藍染の言葉に無反応に見えた彼もついて行くつもりは有るらしい。
指示を遂行しに行く彼らの背を藍染は静かに見詰める。そんな彼の横から市丸はひょっこりと顔を覗かせた。
「なんでわざわざゆうりまで行かせはるのん?別に行かんでも十刃だけで足りるんとちゃいます?」
「簡単な話だよ。1ヶ月、ここで過ごしたあの子は破面と関わりすぎた。誰1人殺したがらない彼女は破面すら死ぬ事を赦さないだろう。死神の敵になれなければ、破面の敵にすらなれない無自覚で哀れな中立者さ。そんな姿を見て死神たちが動揺しないわけが無い。一部の者は早まった行動を取るかもしれないね。」
「まぁたゆうりで遊ばはって…そのうちほんまに寝首かかれんといてくださいよ。」
戦争に中立等は存在しない。尸魂界に乗り込んで来た時とは訳が違うのだ。勝つのはどちらか一方のみ。それを理解しようとしない彼女は、目の前で傷付いた者は破面だろうが助けてしまうだろう。それが死神たちの不信感を煽るとも知らずに。
そんな会話をしているとは露知らず、ゆうり達は玉座の間を後にした。
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