第13章 破面編(前編)
1度刃を交えてから何度目の顔合わせだろうか。いっそうんざりする程、彼は1人で部屋にいる時に訪れて来ては刃を向けて来た。正直、藍染に呼ばれた時と同等に面倒臭い。更木も戦闘狂ではあったが、まだ彼の方が理性的だったと思えてしまうほどだ。
そんな思いが顔に出ていたのかノイトラはニヤケ顔でこちら側へと向かって来た。
「はッ、ペットの散歩か?ウルキオラ。」
「お前も藍染様に呼ばれているだろう。わざわざこんな所で待つほどこの女が気になって仕方が無いらしいな。」
「……あァ?口に気を付けろよ。この場でお前からぶっ殺してやろうか?」
「残念だがお前には無理だ。ノイトラ。」
「ペット扱いしないで頂戴。私は死神よ。」
「笑わせんな、藍染に飼われたペットの間違いだろ。」
それはある種貴方も同じだと思うけれど。
そう思ったところで口を噤む。売り言葉に買い言葉で挑んでいれば本当に武器を持ち出しかねない男だ。首を小さく横に振り3人歩いて藍染の待つ玉座の間の奥へと向かった。
「…ウルキオラ入ります。」
大扉がゆっくりと開く。部屋には他の十刃も集まっており、光を拒むかの如く暗い中、床に置かれた大きい透明な箱らしき物が異質な光を放つ。透けて見える中には、身体全体に包帯を巻き付けたような、人型の何かが入っている。
箱の前に立つ藍染は、ウルキオラの声に振り返り箱の上に崩玉を乗せた。
「…来たね。ウルキオラ、ゆうり。ノイトラも居るとは随分な顔ぶれだな。」
「……それは何?何をする気なの…?」
「今、終わるところだ。よく見ているといい。」
初めて目にするあまりにも異質な存在にゆうりは眉を顰める。ウルキオラとノイトラはソレが何なのか既に分かっているようで、気にせず眼前の階段を降り彼女もそれを追った。
「…崩玉の覚醒状態は?」
「五割だ。予定通りだよ。尸魂界にとってはね。当然だ。崩玉を直接手にした者でなければ判るはずもない。そして恐らく崩玉を開発して直ぐに封印し、そのまま1度として封を解かなかった浦原喜助すらも知るまい。封印から解かれて睡眠状態にある崩玉は隊長格に倍する霊圧を持つ者と一時的に融合することでほんの一瞬、完全覚醒状態と同等の能力を発揮するという事をね。」