第13章 破面編(前編)
ゆうりが虚圏に来てから約1ヶ月近い刻が過ぎた。多少強引とはいえど破面との交流も有りここがどういう場所なのか、破面が何なのか少しは解ってきた気もする。
そんなとある日。彼女はウルキオラの部屋へと向かっていた。扉を開け、中に入るとパッと見彼の姿は見えない。しかし霊圧は感じる。
「ウルキオラ……あら。」
辺りを見渡すとソファの背もたれの奥に人影が見える。覗き込むと彼は瞼を伏せておりどうやら眠っているようだった。ゆうりは意外そうに彼を見下ろし、観察をする。矢張り眠りについている時はどんな生き物でも多少警戒心は薄れるらしい。
「……何の用だ。」
「起こした?ごめんなさい。貴方も睡眠を必要とするのね。夢も見たりするの?」
「下らん問答の為にわざわざここに来たのか?ならば出て行け。お前の戯れに付き合うつもりは無い。」
「相変わらず冷たいわね。出会った頃の冬獅郎にそっくり。」
ウルキオラは身体を起こしソファーへ座る。ゆうりは隣に移動するなり、そんな彼の隣へと腰を掛けた。今度はウルキオラが、表情1つ変えないまま彼女を観察する様にジッと顔を見詰める。
…何故隣に来た。何が目的だ。相変わらずこの女のする事は理解が出来ない。…否、する必要も無いのだが。
「…俺の問いに答えるつもりがないのなら追い出すが。」
「もう、少しくらい会話を楽しんでも良いじゃない。用事ならちゃんと有るわ。」
「無駄話がしたいならば他を当たれと言っている。お前にはその権利が与えられているだろう、女。」
「その女って辞めて欲しいのだけれど。染谷って名前があるの。藍染達は名前で呼んでいるじゃない。」
「お前が藍染様と同じだとでも?大層な自信だな。」
「同じよ、彼は私と同じ死神だわ。今の所はね。…まぁいいわ。ウルキオラ、私虚夜宮の外に出たいの。1人で行くと貴方怒るでしょう?一緒に来て。」
「断る。」
「なら1人で行っても良い?」
「お前の仲間が死ぬ事になっても良いのなら勝手にしろ。」
「そう言うと思ったから一緒に来てって言ってるのに。」
「外に出る事に何の意味が有る。出た所でお前が望むものは何も無い。」