第13章 破面編(前編)
「外…って、言ったのに……!」
「返事せんかったやん。」
「あんなこと急に言われて直ぐに分かったなんて言えるわけ無いじゃない!」
「えーボクとしては即答して欲しい所なんやけどなぁ。」
惚けた声で腰を引くと、体液に塗れた陰茎がずるりと引き抜かれる。白濁の残滓と彼女の秘所とが糸を引き、艶かしい様子に息を飲んだが直ぐに視線を外へ流す。
「これでいい加減ボクの子ぉ孕んだったらええのに。」
「いいわけないでしょ。今すぐ流して来るからシャワー貸して。」
「外出る扉のすぐ横や。ボクが手伝おか?」
「誰のせいだと思ってるのよ。絶対入って来ないで!来たら本気で怒るからね。」
「いけずやなぁ。」
彼女は自分の衣服を持ってシャワー室へ走り消えて行く。
あーあ、これが多分、ボクがゆうりに触れられる最後のチャンスの筈やったんやけどなぁ。どうせなら、もう少し付き合わせたったら良かったわ。
…でもまぁ、ボクが彼に頼まれたことは全部やった。間もなく戦争は始まる。ここから先はボクも、彼も知らんけど、ボクのやる事も望みも、昔から何一つ変わらん。
彼の掌の中で転がるのは色のくすんだシルバーリングだった。中央には黒く細いラインが敷かれ、途中に空色の石が埋め込まれた至極シンプルなリング。
それを愛おしそうに見詰め、口付けを1つ落とし呟いた。
「愛してるで、ゆうり。ずーっと前から、他の誰よりも。ボクがイチバンや。」
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