第3章 真央霊術院編
彼はゆうりの言われた通りに深く深呼吸をした。自分の中にある霊力を探り、それが手の先まで集まってから的へ向かって打つ。そんな姿を頭の中にハッキリと思い浮かべる。
「…破道の三十一、赤火砲!!」
赤い玉のような光が的に向かい真っ直ぐに飛んで行った。それはしっかりと板を捉え、焼け焦げた棒だけが残る。阿散井は自分の放った破道に口をポカンと開き、雛森はパチパチと拍手を送る。
「で、出た…。」
「凄い!!出来たね阿散井くん!」
「威力も結構高かったな…。」
「やれば出来るじゃない。凄い凄い!」
「が、ガキ扱いすんなよ!」
ゆうりが阿散井の頭を撫でると彼はその手を払った。やや頬が赤い所から照れているのだろうと察した彼女は地面に置いた鞄を肩に掛ける。
「それじゃあ、大丈夫そうだし私図書館に行かないといけないから。分からないことがあったらいつでもうちのクラスにおいで。じゃあね〜。」
「あッ…おい、待てよ!」
「…何?恋次。」
踵を返した所で片手首を掴まれる。振り返れば掴んで来たのは阿散井だった。ゆうりはキョトンとした目で彼を見詰めると、阿散井は言い難そうに唇を小さく開閉させる。
「ア…アリガトウゴザイマシタ。」
「凄いカタコト!!1回当たっただけじゃ出来たとは言えないから、これからもちゃんと練習してね。」
「わかってるよ。」
「ゆうりさん、ありがとうございました!」
「ありがとうございました!」
「桃とイヅルもこれから頑張って。ばいはーい。」
ヒラヒラと手を振り去って行くゆうり。残された3人は彼女の後ろ姿が見えなくなったところでやっと口を開いた。
「ゆうりさん、気さくな方だったね。」
「あぁ、それに教えるのが上手い。何でゆうりさんが学年で2番なんだろう…。」
「もっとすげえ奴が居るんじゃねーの?」
「後で調べて見ようかな。」
「僕も気になるな。」
「今はんな事良いって!練習だ練習!!」
3人は再び鬼道の練習に戻る。集中力を切らした阿散井がまたもや手元で鬼道を爆発させた事を、ゆうりは知る由もなかった。
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