第3章 真央霊術院編
あまりに彼女を凝視し続けていたせいか、不意に視線が絡んだ。ゆうりは彼にニコリと笑いかける。その笑顔が美人というより何処か可愛らしく赤髪の男の頬がカッと熱くなる。
「私は染谷ゆうり。3人の名前を教えて貰ってもいいかな?補習の子だよね?」
「私は雛森桃です!」
「僕は吉良イヅルです。」
「阿散井恋次だ。」
「桃とイヅルと、恋次ね。私の事は好きに呼んでくれて構わないし敬語じゃなくてもいいよ。」
「んじゃ遠慮なく。」
「あっ…阿散井くん!流石に失礼だよ…!」
「あはは、いいんだよイヅル。」
「あの、ゆうりさんって呼んでもいいですか…?」
「うん、もちろん。所で、3人とも補習なの?私先生の代わりに鬼道を教えるように頼まれて来たんだけど…。」
「ゆうりさんが!?」
「僕は阿散井君の手伝いで、雛森くんは自主練なんですけど良いですか…?」
「あ、じゃあ補習は恋次だけなんだ。」
「んだよ、悪ィか!!」
「ふふっ、そんな事言ってないよ。恋次は鬼道とかよりも白打や剣術の方が得意そうだもんね。一緒に頑張りましょう。」
2人とは違い威勢の良い阿散井にゆうりは笑う。
それから4人は鬼道の練習へと移った。雛森は鬼道が元々得意なようで、放った赤火砲は遠くに立てられた的を掠る。吉良も鬼道に関してはとても優秀で的の中心をしっかり当てている。問題はやはり、阿散井だった。
「破道の三十一、赤火砲!!」
「うわっ!」
ボンッ、と派手な音を立てて阿散井の手元で軽い爆発が起こった。一度既にその光景を見ていた雛森と吉良は苦笑し、ゆうりは目を丸めて驚く。爆発を起こした張本人は口から黒い煙を吐いた。
「…す、凄いね…破道って失敗すると爆発するんだ…。」
「授業の時と全く一緒だよ阿散井君。」
「う…うるせー。」
煤を払った阿散井はややむくれていたが、ゆうりは気にせず彼の前に立つ。
「ただ唱えるだけじゃ意味ないの。自分の中にある霊力をしっかり感じて、イメージして。手の先に集まった霊力の塊が指先から離れ、的を捉える姿を。」
「イメージ…。」
「そう、深呼吸して。自分に意識を集中させて。」