第13章 破面編(前編)
彼は床を蹴り、武器を構えゆうりに襲い掛かる。飛び上がり、大きな長物を振り上げ彼女を目掛け振り下ろすと彼女は避けもせず見据え、両手で刀の柄を握り直すと頭より少し高い位置まで持ち上げ横に構えて受けとめた。ガガッ、と金属の擦れる鈍い音を立てるがそれ以上沈む事の無い様子にノイトラは顔を顰める。
「チッ……女の癖に楯突くんじゃねェぞ!」
「強さに女も男も無いわ。」
「うるせェ!!」
引き上げた武器をもう一度上から、横から、下からと力任せに振り回せど打ち付けど彼女は顔色一つ変えずに刀1本で全て受けとめる。それが続けば続くほどノイトラの苛立ちは募り、徐々にその表情も険しさを増した。
気に食わねぇ。メスがオスよりも上であることが。その上、其れが死神だという事が。気に入らねぇ。メスよりオスが強ェのが当たり前なんだよ。なのにこの女、ネリエルみてぇな目ェしやがって。
「気にいらねぇんだよその目!!ぶち抜いてやるよ死神ィ!!!」
「ッ!!」
ノイトラは口を開くと長い舌を突き出す。するとそこに光が集まり、直ぐに細い閃光のようなものが放たれた。虚閃だ。しかも普通の虚閃より細い分、力が圧縮されている。ゆうりは直ぐに花弁を1枚指先に乗せ、振りかぶって勢い良く放ってやれば、蝶の如く大きな2枚の羽根を持った花弁は風に乗る鳥の様に勢いよく虚閃へと向かい、衝突して弾け爆風を生む。
「ンだと…!」
「へぇ…矢張りこれは霊力の塊か。虚閃をたかだかこんな花弁1つで防ぐとは相当の力だな。」
「もう良いでしょう、貴方は私に傷1つ付けられないわ。分かったら退いて。」
「舐めん、は………ッ!?何だコレ…!」
「これは……毒か…!?」
顬に青筋を浮かべ、再び長物を持ち上げようと力を込めた所で指先の力が抜け彼が持っていた長物がガシャン、と音を立てて滑り落ちる。それを追うかの様に膝の力が抜け、身体が床に倒れ込む。それはザエルアポロも同じで、僅かに双眸を見開く。
そんな彼らをよそにゆうりは始解を解いて刀を鞘に収め、2人の前でしゃがみ込み意地悪く笑う。