第13章 破面編(前編)
「なるほどね。そもそも私は藍染の所有物とされてるんじゃないの?彼の知らない場所で卍解なんてさせたら都合が悪いのは貴方でしょう?」
「勿論、殺しなんてしたら僕も同様に藍染様に殺されるだろうね。だが卍解させた程度ではそこまでのお咎めは無いさ。なにせ過去に僕らはNo3の十刃をこの城から追い出したが、それでもこうして生きている。」
「……僕ら?」
「あぁ、そうさ。ほら……君の後ろに居る彼と僕で、ね。」
「な………ッ!」
咄嗟に振り返ったゆうりは瞠目する。そこに立っていたのはスラリとした長身に長めの黒い髪を揺らし、口元に弧を浮かべた男だ。彼は身長と同じくらい長い柄に巨大な三日月を2つ背中合わせにくっ付けたような大きな長物を振り上げていた。
容赦も躊躇いも無く振り下ろされるそれを避けようと横に飛び上がる。先程までゆうりが座っていた椅子は叩き付けられた獲物によって砕け床にまで亀裂が入った。その様子から本気で叩き潰すつもりだった様子が伺え口元が引き攣る。
「チッ、だから縛り付けとけって言ったんだよ。」
「ちょっと…どういうつもりよ!」
「どうもこうもない、君が素直に卍解を見せるとはハナから思って無かったというだけの話さ。それなら、強行手段に出るのもやむを得ないだろう?この香は君たち死神の霊圧探査を鈍らせるものでね。効果があったようで何よりだ。」
ノイトラは床に突き刺さった武器を持ち上げ肩に担ぐ。パラパラと床材が散り落ちる姿を見てゆうりは大きく息を吐いた。全く、初対面からそうだったが随分と血の気の多い十刃がいたものだ。
「随分と舐めてくれるわね。けれど残念ながら私の卍解は戦い向けじゃないの。お詫びと言ってはなんだけど、少し遊んであげるわ。魅染めろ。"胡蝶蘭"。」
斬魄刀を抜き、始解をすると白い花弁が無数に舞い、真っ白な刀身が露になる。それは通常の刀と長さは変わらず、ただ周囲に花弁がふわふわと漂っていた。ノイトラやザエルアポロの近くで生き物の如く舞うそれを彼らは不快げに払おうとする。
「なんだァ?こんなもんかよ。ただの目眩しじゃねぇか。」
「無闇に触るなノイトラ。」
「俺に指図すんじゃねェ!知ったこっちゃねぇよ!」