第3章 真央霊術院編
「実は1回生で鬼道の補習掛かった奴が居るんだけど担当教員が急用で帰っちまってな。お前ちょっと見てやってくれ。」
「私がですか?」
「鬼道得意だろ?」
「まぁそれなりに…。」
「今練習場に居るから。」
「今ですか!?」
「おう。じゃ、よろしくな〜。」
ゆうりの主張を一切聞かずに浅田は肩をぽんと叩き行ってしまった。残されたゆうりは呆然と立ち尽くす。
「…本、返しに行きたかったのに…。」
こうなってはもう仕方が無い。本の返却日までまだ時間もある。ゆうりはやや強引に押し付けられた仕事にため息を漏らし、指定された練習場へ足を運んだ。
「先生来ないね…。」
「走り込み終わったのに、遅いな。」
「忘れてんじゃねーのか?」
そこには3人の生徒が居た。赤髪でガタイの良い男と、金髪で少し気弱そうな男と、二つ結びをした小柄な女の子だ。彼らが補習予定の子達だろうか。ゆうりは彼らの元へ歩み寄る。女の子が今一番にゆうりの存在に気が付き、目を見開き口元に両手を当てた。
「あっ……貴方は……!」
「え?あ…ろ、6回生の…染谷ゆうりさん…!?」
「誰だ…?」
女の子と金髪の男の子は彼女の姿を見るなり随分驚いた。赤髪の男は特にそんな様子も無く首を傾げる。また、ゆうり自身も何故名前が知られているのか分からず赤髪の男と同じように首を傾げた。
「私を知ってるの?」
「もちろんです!真央霊術院創設以来稀に見る鬼道の天才…!!美人で、勉強も出来るって1回生の中で有名です!お話出来て嬉しいです…!」
「そんな大袈裟な噂初めて聞いたよ…。」
目をキラキラ輝かせて子供のように興奮して見せる女の子にゆうりは照れて頬を掻いた。そんな様子に赤髪の男はまるで気に食わないとばかりに顔を顰める。
「チッ…どうせいい所の出なんだろ。」
「染谷さんは流魂街出身だよ。だからこそ余計注目が集まるんだ。」
悪態をつく赤髪に金髪の男の子がこっそりと耳打ちした。赤髪の男は再びゆうりへ視線を向ける。確かに美人だ、顔立ちが整ってるだけではなく何処か気品に溢れて居るようにも見えた。流魂街に住んでたような女が、こんな出で立ちになるもんか…?そんな疑問を持つ。