第13章 破面編(前編)
「ッ……!!」
「……失礼、します…!」
「ロリ…。」
「行くわよメノリ!」
ロリと呼ばれたツインテールの破面は再度ゆうりを強く睨むと大股で出て行った。次いでメノリもその後を追って王座の間を出て行く。残されたゆうりは口元を袖で拭い、苛立ちを隠さず藍染の手を振り払う。
「…最低。」
「相変わらず嫌われたものだな。ウルキオラ、君は残るのかい。」
「……戯れを。」
ウルキオラはそれだけ言うと彼女らの横を通り過ぎ、王座の間の更に奥へと足を運ぶ。藍染も立ち上がりその後を着いた。初めてここに来た時は気が付かなかったが、どうやらここよりも奥に部屋が有るらしい。
「彼女達の顔を見たかい?あれは嫉妬だよ。破面も恋をするとは面白いと思わないか?それも、自らの天敵とも呼べる死神に。」
「…破面だって元は人よ。何もおかしな事は無いわ。私、貴方のそういう所大嫌い。」
ふい、と藍染から顔を背ける。そんなゆうりに彼はただ愉快気に笑うだけだった。
辿り着いたのは何も無い真っ暗な部屋だ。その中心で藍染が床に手を翳すとキィン、と音を立て筒状の何かが迫り上がる。それは藍染の手元まで伸び上がると動きを止め、彼が指先で先を軽く叩けばゆっくり開いた。
そこにあったおぞましい程の力の塊に全身の毛が粟立つ。大きさは掌に収まる程度のほんの小さな物にも関わらず直感的に、これが"崩玉"なのだと分かってしまう位膨大な力を圧縮した様な物質に鳥肌が止まらない。あの時、あの丘で喉から手が出る程取り返したかった筈なのに、触れたいとすら思えない。
「…解るようだね。これが崩玉だよ。瞬間的覚醒を繰り返したおかげでやや衰弱してはいるが確実に完全な覚醒へと進んでいる。」
「こんなに小さいのに……気持ち悪いくらい強い。壊せないのも納得だわ。」
「虚の破面化、王鍵の創生、どちらもこの崩玉なくしては成し得ない。…君にこれを見せたことは私から君への信頼の証だと思ってくれ。」
「…よく言うわ。崩玉を見せても、私に100年以上も前に造られたエネルギーの塊をどうにかする力は無いわよ。」