第13章 破面編(前編)
それは紛れも無い宣戦布告だった。
今現世では浦原が、尸魂界では総隊長が協力して決戦に向けて準備を進めている。彼らがどんなやり取りを秘密裏でしているのか、未来を知った今概ね想像がつく。死神たちの準備が整うまで、それまでは大人しくしておいてやる、そんな想いだ。
ウルキオラの表情は変わらない。ただ、気丈な女だと思う。本来ならば味方を裏切りこちらに来た事に対する不安や焦燥に駆られても仕方がないはずだ。その為にわざわざ1人の時を狙い連れて来たのだから。それなのにこの女は、死神達はまだ自分を信じていると疑わないだけでなく、己も死神たちを信じている。…藍染様が何故、この女に執着しているのか何となく分かる気がした。
「…いつまで掴んでいるつもりだ。」
「…あら、ごめんね。」
言われてゆうりはパッと手を離す。そして何事も無かったかのように歩き始めたウルキオラの背を追った。
王座の間には藍染はもちろんのこと、ほかに2人の破面が立っている。十刃の紹介の中には居なかったはずだ。1人はツインテールの女、もう1人はショートカットの女。彼女らは誰かの従属官だろうか…?
「あぁ、漸く来たね。おいで、ゆうり。」
「…はい。」
「ロリ、メノリ。キミたちは下がってくれ。」
頬杖をついて紅茶を嗜む彼に呼ばれ渋々隣まで歩みを進める。藍染より命を受けた彼女らは狼狽えた様子で顔を合わせ、直ぐに抗議した。
「あっ…藍染様をこのような女と2人にする訳には…!」
「彼女は私に何も出来ないよ。」
「しかし…ッ!」
「ゆうり。」
「何……んっ!」
ゆうりは唐突に腕を掴まれると強く下に引かれる。バランスを崩した先で藍染の隻手が彼女の顎を掴みそのまま唇が重なった。厚い唇の隙間から差し出された舌肉が歯列の合わせをなぞり強引に割入る。
「ちょ、ッ、…!」
「ふ……。」
驚き肩を押し返すも腕を掴む手に力が篭もる。濡れた舌腹が上顎を撫で、舌同士が絡み合う感触にゾワゾワと背筋が震えた。
まさか口付けると毛頭思っていなかったロリ、メノリは当然怒りと驚愕で手に拳を作り忌々しげにゆうりを睨む。ウルキオラは少しばかり目を見開くが特に何も言わない。そんな三者の様子を藍染は流し見ては短く笑って唇を離す。
「…今からするのはこういう事だが、興味があるのなら残るといい。」