第13章 破面編(前編)
虚夜城に来てから翌日。相変わらず部屋から見る外は暗く朝も昼も無い。代わり映えのない景色に時間感覚が可笑しくなりそうな気がした。…いや、よく見たら月の位置も変わっていない。ここには時間の経過という概念は無いのだろうか。自分の部屋以外はどうやら青空のようだし。
窓からぼんやりと空を眺めていたら、ふと後ろに気配を感じた。
「藍染様がお呼びだ。来い。」
「…………えぇ。」
そこにいたのはウルキオラだった。彼の一言に眉を顰める。早速何かさせようと言うのだろうか。分からないが少しばかり躊躇う。けれどここで躊躇っても、敵対心を剥き出しにしても有利なことはひとつも無い。瞼を伏せて息を吐き出す。身体の緊張を僅かでも解すとゆうりは1つ頷き彼と共に部屋を出る。
「昨日スタークさんとお話したわ。十刃って強さで数字が決まるのね。ウルキオラは幾つなの?」
「それを知ってどうする?反逆でもするつもりか?」
「いえ、ただの好奇心ね。貴方がヤミーと一緒に現世に来た時、凄く強いのだろうと思ったし、スタークさんから十刃について聞いた時は貴方が第1十刃だと思ってたから。」
「くだらん。知る必要は無い。」
「…そんなに警戒しなくても何もしないわよ?」
「警戒?俺が?」
少し前を歩いていた彼はぴくりと指先を揺らすと振り返る。踵を返し、真っ直ぐ向かって来るウルキオラについ後退ると彼は無表情のまま目の前で足を止めた。
「思い上がるなよ、女。十刃の誰もがお前に手を出さないのはお前が藍染様の所有物だからだ。そうでなければ俺たちは何時でもお前を殺せることを忘れるな。」
「え?……ふっ、あはは!貴方、そんな事言うのね。意外。」
「何…?」
警戒している、そう言われたのが琴線に触れたのかどこか脅しめいた言葉を並べるウルキオラにゆうりは笑う。怯える事は無いだろうとは思えど、笑い出すとは思っておらず表情には出さぬものの俄に驚いた。彼女は瞳を細めると、彼の手首を掴み引き寄せる。鼻先が触れ合いそうな距離のまま、口を開いた。
「貴方達が私に手を出せないように、私がここで暴れないのは現世を人質に取られているからよ。警戒はなさい。破面が斬魄刀に本来の力を封じているように、私は制御装置に常に霊力を喰わせてるの。外して暴れれば、それなりの被害は出せるわよ。女だからといって油断はしないでね。」