第13章 破面編(前編)
「どうやって行くつもりッスか。だぁいじょうぶ!あの子は賢く強い。恐らく、殺されることも無い。そう簡単に利用されてはくれないでしょう。アタシらは決戦に備えてちゃんと準備を進めましょ!」
「んな悠長な事言ってて良いのかよ!?破面も10体以上居るんだろ!?」
「どの道急いで乗り込んだ所で勝てやしねぇよ、言っただろ。死神が負けた世界から来たって。それより阿散井、地獄蝶貸してくれ。」
「はぁ?なんで俺が…。」
「俺は浦原の書簡を総隊長に届けたい。それに、1回尸魂界に戻らないと俺の霊力も回復しねぇからこの先ずっと使い物になんねぇの。斬魄刀も浅打に戻っちまったしな。胡蝶蘭は無理でも、霊力が戻れば此処では別の形で俺の魂の形を映してくれるかもしんねぇし。」
ヒラヒラと紙を見せ付ける蘭雪にぐっと押し黙る。あれは多分、本来ゆうりが託されていたはずのものだ。となれば、自ずと総隊長の命令を続行する為の要望である事も直ぐに理解出来る。さすれば断る理由がない。
「…分かったよ、戻って来る時2羽連れて来いよ!忘れんじゃねぇぞ!」
「助かるよ。」
蘭雪は阿散井から地獄蝶を受け取ると、浅打を使い門を開く。扉の奥へ消えていく彼の背中を見て浦原は帽子を深く被り直し強く唇を噛み締める。
今と同じように見送った彼女は、攫われてしまった。あんな事を言ったとて、心配が無い訳が無い。阿散井を制止したが、本音を言えば今すぐにでも自分が虚圏に乗り込み奪い返したい思いでいっぱいだった。こうなったのは、何よりも自分の責任だ。
自責の念が胸中を渦巻く。どうか、どうかせめて彼女が無事であるように。それだけを強く願うのだった。
*