第3章 真央霊術院編
「あぁ、聞いた。」
「突然ぱったり帰ってこなくなったの。もう1人の友達の人も。でもね、2人共ただの死神じゃなくて、隊長だったんだよ。どうしても死んだとは思えなくて…何か事件に巻き込まれたんじゃないかと思って、読み漁ってるの。少しでも情報が無いかなって。」
「ゆうりちゃんにとってよっぽど大切な人なんだね…。」
「こっちの世界に来てからの親みたいなものだから。」
そう言って瞳を伏せたゆうりは無意識に右耳へ付けられたピアスへ触れた。随分時が経ったがまだ顔も声も覚えている。会いたいなぁ…。そんな言葉がひっそりと零れる。パチッと目を開くと檜佐木と目が合った。彼の唇は若干への字に曲がっている。
「見つかるといいな。」
「うん。…あ、修兵妬いてる?」
「…お前ホントに恋愛小説読んでたのか?」
「いひゃいいひゃい!ごめん〜!」
全く悪気無い口調で小首を傾げ尋ねてくるゆうりに檜佐木は顔を引き攣らせ彼女の頬を摘んで左右に伸ばした。直ぐに謝るゆうりだったが声音は随分楽しげに聞こえる。檜佐木も怒っている様子はあまり無く、何処か楽しそうだ。
「ごめん、じゃなくてごめんなさいだろ?」
「ごめんなひゃい…!」
「聞こえねー。」
「あははっ、檜佐木くん意地悪〜!」
「普段からかってくる仕返しだっての。」
笑って茶化す蟹沢に、べー、と舌を出した檜佐木は漸く手を離した。少しばかり赤くなった両頬を摩りゆうりは頬を膨らませる。
「私よりほたるちゃんの方が修兵の事からかってるよ、絶対!」
「えー?だって檜佐木くんわかりやすいんだもん。面白くて。」
「俺で遊ぶな!」
「ふふ、仲良いね。それじゃあ私図書館行ってくるから。ほたるちゃんはまた寮でね。修兵はまた明日!」
「気をつけて行けよ。」
「後でねー!」
2人に手を振りゆうりは下駄箱へと向かった。いつも通り履き替え図書館へと向かおうとした所、遠くから自分を呼ぶ声が聞こえてくる。何かと思い振り返ると担任の浅田だった。
「どうしたんですか?先生。」
「呼び止めて悪ぃな。ちょっと頼みたい事が有るんだが良いか?」
「な、内容次第では…?」
「おー聞いてくれるか、ありがとな!流石優等生!」
「先生私の話聞いてました?」