第13章 破面編(前編)
どこかアテがあるわけではない。ただこの地を知る為に探索をする。しかし思っていた以上に何処まで行っても視界に飛び込む景色は怖いくらいに変わらない。色は無く静かで冷たい。そんな時、漸く遠くに人影が見えて来た。沢山クッションが積まれた場所で寝転ぶ男。名前は確か…
「コヨーテ・スタークさん?」
「あ…?……なんだ、嬢ちゃんか。お前、勝手にフラついてて良いのか?捕虜だろ。」
「部屋に扉があって、鍵も掛けられていないのなら自由にしてもいいって事じゃない?隣失礼してもいいですか?」
「えー…嫌だけど。」
「そう言わずに。」
「…意外と強引だな。めんどくせぇ。」
スタークは身体を起こすと、ふわぁ、と大欠伸を零す。そんな彼をまじまじ見詰めた。…改めて見ると、ウルキオラと比べても人間に近しい。見た目も、仕草も。
「で、お前は何でこんな所フラフラしてんだ。」
「私破面の事全然知らないから色々話してみたくって。」
「藍染サマに聞けば良いだろ。」
「極力話かけたくないから嫌。」
「じゃあ俺も話すのめんどくせぇから嫌だ。他の面子当たってくれ。」
ゆうりには背を向ける形で再びごろりと寝転ぶスターク。ウルキオラは最早他人に興味も関心も無い様子だったが、彼は彼で相当のめんどくさがり屋に見える。けれど、だからといって死神に対する嫌悪は今のところ感じない。ただ純粋に、人と話すのが面倒くさいらしい。…死神たちも相当癖の強い集まりだと思っていたけど、破面も中々引けを取らないかもしれない。
「あーーー!!スタークに何してんだテメェ!」
「わぁ!女の子!?」
背後から聞こえて来た声にゆうりの身体が飛び跳ねる。そこに立っていたのは頭に角が生えたヘルメットのような仮面をつけた少女だった。小さな彼女はスタークが見ず知らずの女に襲われている様にでも見えたのだろう、刀を抜き振り上げながら迫って来る。
「スタークから離れろ!!」
「待って待って、私彼に何もしてないわ!」
「んぶ!」
「ゔごッ!!」
まるで子供が玩具の刀を振り回しているのかと思う程無茶苦茶な振り方で突っ込んで来る彼女を避けた。すると少々は手前のクッションで躓き倒れる。倒れた彼女の持つ刀の柄は寝転ぶスタークの股間を思い切り突き刺す。