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【R18】月夜に咲く華【BLEACH】

第13章 破面編(前編)


目を覚まし体を起こすとそこは虚圏と変わらず、真っ白な空間だった。その中に1人、一際派手な出で立ちをした女が立っている。
白、檸檬色、橙色、桃色、赤、薄紫、青とまるで十二単の如くずっしりと着物が重ねられ、腰まで届く濡れ羽色の髪が揺れる度艶めかしく青が差す。長い睫毛から覗く飴色の瞳は、地に転がるゆうりを愉快げに見下ろした。
ただ、美しいと思った。凛とした佇まいがそう見せるのか分からない。静かなのに、鮮やか。何も語らずとも存在を主張するその姿は正に華である。
だからこそ直感的に分かってしまった。彼女こそが、己の斬魄刀。『胡蝶蘭』なのだと。
…おかしい。そんなわけが無い。じゃあ今まで顔を合わせていたあの男は誰…?

『…ふむ、その顔だと妾が誰か理解しているようじゃの。』

「……わ、分からない、胡蝶蘭は…蘭は…男で、ずっと私の傍に居て…。」

『分からない?本当に?そなたは呼んだではないか。此奴の名を。』

彼女が振り返る先に視線を移すとそこには見覚えのある男が立っている。それは間違いなく自分がよく知る胡蝶蘭だ。…いや、厳密には違う。私が知っている胡蝶蘭は、死覇装など着ていない。着るはずが無い。だって彼は斬魄刀で、死覇装は死神が着るものなのだから。

「ねぇ…貴方が胡蝶蘭だよね…?蘭…そうだって言って…!」

まるで縋る思いで彼の服の裾を掴む。嫌な汗が全身を纏う。何をそんなに焦っているのか最早自分でも分からない。困った様に視線を逸らす男に、隣の女は手にしていた扇子で口元を隠し密やかに笑った。そしてゆうりの前に屈むと片手の指先を顎に添えゆっくり掬い上げる。

『妾こそが胡蝶蘭。元はその男の斬魄刀であり、今は主の斬魄刀じゃ。』

「なん……元…?」

『過去から逃げるな、目を背けるな。本当は全て憶えているはずじゃろうて。この男が誰なのか…この先主かどうなるか。……というか、いい加減思い出してやれ。此奴は拗ねると面倒極まりないぞ。』

「え……?」

女は扇子を閉じ立ち上がると、その先端で男の頭を軽くぽんぽんと叩く。彼の表情を良く見るとその顔は確かに少しむくれている様にも見える。そんな子供のような姿を見るのは初めてで、ゆうりは目を見開く。
男はゆうりの視線を受け数拍置いてから大きく息を吐き出した。片手を持ち上げ、後頭部をボリボリと掻く。
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