第13章 破面編(前編)
黒腔を進み着いた先…虚夜宮。虚達が住まうそこは一切の色など無く、見渡す限りの黒と白で埋め尽くされている。その色の無い空間がどこか冷たく淋しい。
ゆうりはウルキオラに連れられるがまま奥に進む。軈て開けた場所に辿り着くと人…いや、生き物の気配が徐々に強くなった。
「───ようこそ。我らの城『虚夜宮』へ。待っていたよ。ゆうり。」
「……藍染…。」
細長い机の両側に備えられた椅子には、恐らく成体だと思われる虚が並んでおり、その先で破面と似た真っ白い服に身を包む藍染が座っている。横に市丸が何食わぬ顔で立っているが、東仙は見当たらない。周囲を見わたす彼女を察してか藍染は口を開いた。
「要なら今無断出撃している同胞を追って現世に向かった所だよ。直ぐに戻るだろう。先に十刃の諸君にキミを紹介しようか。」
「十刃?」
「ただの破面やないよ。ここにおるのはみーんな、成体の中でも特に殺傷能力に優れとる。尸魂界で言う隊長みたいなもんやね。」
「…既に10体も居るのね。」
ごくりと生唾を飲み込む。まさかもうここまで成体が造られているとは思いもしていなかった。そしてそれはきっと、尸魂界も同じだろう。
改めて辺りを見渡す。年老いた老人のような姿をした者から、正に女性のような体つきをしている者、成人した男性のような者もいれば、逆さにした試験管に顔のついた丸い玉のようなものが2つ入っている者も居る。
なんて……なんて人に近い姿をしているのだろう。彼らが虚だとは最早思えない程だ。
「彼女は染谷ゆうり。尸魂界の中で最も特殊な死神と思っていい。早速で悪いが、回帰能力を見せてくれ。」
「…どうすれば?」
「ヤミーの腕を治してくれるかい。」
ふと視線を向ける。この前切り落とされた腕は、太い糸のようなものでくっつけられてはいるものの、ただ添えられているだけなのか重力に従いだらりと垂れている。元々虚には自己治癒能力が備わっている者も多い。それを利用しているのだろうか?わからない。…兎に角ここまで損傷しているのであれば、鬼道を用いるよりも回帰能力を使う方が余程回復は早い。
「失礼します。」