第13章 破面編(前編)
彼女の言葉に反応したのは阿散井だった。
初めてこの現世で一護と戦った時、彼は余りにも弱かった。然し、瀞霊廷に来た時、まるで人が変わったのかと思う程強く事実自分も負けた。
たった10日足らずで一護を強くした男…興味が有る。それに…。
阿散井の視線がルキアに向けられる。大切な幼なじみがあんな目に遭う事になった元凶でもあるのだ。1度顔を合わせてみたい。そんな思いを抱える。
「…構わないわ。行こう、恋次。」
「助かるぜ。」
「浦原は変態だから気を付けろよー!」
ルキアと一護に見送られ、ゆうりと阿散井は浦原商店へ向かい歩き始めた。その道中、彼女は興味深そうな表情で阿散井の顔を覗き込む。
「ねぇ、どうしてルキアの事見詰めてたの?」
「は……ッ!べ、別に何でもねぇよッ!つーかよく見てんな…。」
「そりゃあれだけ熱心に見ていたら気づくわよ。さっきも1番ルキアに近しいのは恋次って言ってたでしょう?私もそれなりにルキアとは長い付き合いだったと思うんだけれど、それ以上の何かがあるのかなーって思って。」
「幼なじみだよ、俺はガキの頃あいつと同じ地域で育ったんだ。」
「そうなの!?全然知らなかったわ…。てっきり恋仲とかそういう関係かと思ったのに。」
「恋っ……!お前もう静かにしててくれよ…。」
ぶわっ、と髪の色の同じくらい顔を赤く染める彼は片手でこめかみを押さえ、煩く響く心臓を落ち着かせるように深く息を吐いた。
そうこうしている間にゆうりにとっては見慣れた、阿散井にとっては初めて見る"浦原商店"の看板が見えてくる。そこはまるで人を拒むように既にシャッターが降りていた。
「…あれ、今日は閉まるの早いな。声掛けて来るから待っててくれる?」
「あぁ。」
彼女は阿散井を置いて裏口の扉から商店へ入る。するとそこには待っていましたと言わんばかりに、店主が立っていた。彼がパッと両腕を広げる。ゆうりは1度目を丸めるがその意図を悟るなり、遠慮がちに抱き着くと同様に背中に腕が回された。
「おかえりなさーい♪待ってましたよ。」
「ただいま、喜助。」
「おやおやおや〜?男物の香水の匂いがしますねぇ?」
「…わっ、もう。分かってる癖に聞かないで。」