第13章 破面編(前編)
「うおおおッ!?な…何してんだコラ!!ボタン1個外してもダメなもんはダメだかんな!!」
彼の言葉にキョトンと目を丸めた松本は無言で胸元のボタンを1つ外す。それでもYesとは言わない一護に今度はスカートを少し上げてみる。思春期真っ盛りの男にとってこの誘惑に耐えるのは困難なようで、咄嗟に手のひらで目元を隠すものの指の隙間から瞳が覗いている。
「スカートちょっと上げてもダメだッ!ちくしょう…ッ!!そんな誘惑には屈しねぇ…ッ!断じて屈しねぇ男だぜ俺は!!」
「だったら指の隙間を閉じたらどうだ。」
「私がこっちで駐在任務していた時の家があるけれど、空座町から少し距離が有るのよね。それでも良ければ使っても構わないのだけれど。」
「流石に空座町から出るのはダメだな。いつ何が起こるか分からねェからこそ一護と離れ過ぎるのは得策じゃねぇ。」
「そうですよねぇ。」
「…しょうがないわね…あたしは織姫んとこ泊めてもらうわ!」
日も暮れ始めた為、自ずと解散の空気が流れれば松本は学生鞄を持ち玄関まで向かうなりそう告げる。井上と松本、どちらも女性として体つきも顔も整った正に花園とも言える光景を想像したコンは鼻血とヨダレが同時に溢れ出た。
「もらうわ!って井上に許可とったのかよ?」
「とってないけどあの子は頼めばイヤとは言わないわよ♡」
「…な…なんという禁断の花園!!!そんな花園にマスコットキャラはおひとついかがでばッッ!!」
飛び付いてきたコンへ彼女は笑顔のまま思い切り手刀を食らわせ地面に叩き付ける。同情の眼差しが彼に向けられはするが誰も手を差し伸べる事は無かった。
「隊長も来ます?」
「行くかボケ!」
「来ればいいのに〜〜!楽しいですよォ♡」
「お前がな。」
そう言って、松本と日番谷は一護の家を背に井上の家へと向かう。次に声を上げたのは、斑目だった。
「…俺らも行くぜ。」
「アテがあんのか?」
「あるわけねえだろ。気遣いは無用だ。元よりてめえの世話になる気はねぇ。てめえの寝床くらいてめえで探すさ。」
「……木刀隠して歩いた方がいいぞー……。ゆうりと恋次はどうすんだ?」
「私はもちろん、喜助の所へ行くよ。」
「…!俺も連れて行ってくれ…!」