第13章 破面編(前編)
「ハッキリ言う。このヴァストローデ級の戦闘能力は隊長格より上だ!そして破面化によって大虚共が手に入れる力は未知数だが隊長格が3人抜けそれがそのまま大虚共の上についた今これだけは言える。もし現時点で藍染の下にこのヴァストローデ級が10体以上いたらーー…尸魂界は終わりだ。」
日番谷の言葉に一護は目を見開いた。つい先日死にものぐるいで戦った隊長格ですら敵わないとハッキリ告げられる衝撃は大きい。まさかそこまで力の差が有るなど思ってもいなかった。
重苦しい空気が部屋に漂う。そんな空気を打ち消すように、パン、と掌を打つ音が響く。
「そんな事よりさぁ、そのぬいぐるみは何で動いているワケ?」
「そんな事って……コンは義魂丸っすよ。」
松本の疑問に一護が答えると、松本、阿散井、綾瀬川、斑目の視線が一気にコンへと向けられる。突如一身に浴びる視線にコンはびくりと体が跳ねた。そんな彼の頭を阿散井ががっちりと掴む。
「テメッ、何すんだコノヤロー!男に触られんのはお断…フゴッ!!」
「ははーーん!ナルホドなーー!!」
阿散井がコンの口に指を突っ込み無理矢理義魂丸を取り出すとただのぬいぐるみに戻ったそれは言葉を失いだらりと四肢の力が抜ける。彼は指先に摘んだ丸薬を転がしながら感嘆の声を上げ、松本も興味深そうに抜け殻をつつく。
「コイツなんで動いてんのかと思ったら義魂丸だったのか…てっきりすげーカラクリで動いてんだと思ったぜ。」
「よーー。」
「ソウル・キャンディをぬいぐるみに入れるなんて初めて見たわ。てかぬいぐるみに入れても動くもんなのねぇ。さすが技術開発局ムチャな作りだわ。」
「よーーってば!」
「何だよ?」
後ろからしきりに声を掛ける一護に阿散井は振り返りながら義魂丸をライオンの口に突っ込んだ。器に戻されたコンはハッと目を覚ます。
「オマエらいつ帰んだよ?」
「何言ってんだ帰んねぇよ。破面共との戦いが終わるまで現世に居るぜ。」
「居るぜって…寝るとことかどうすんだよ?言っとくけどウチにはこんな人数泊めるスペース無ぇかんな!」
「えーーー!あたしもダメ?」
「う…えぇ!?いやフツーに考えたらあんたが1番ダメだろ!つーがなんで自分はオッケーだと思ってんのかがわかんねーよ!」
「……………。」