第13章 破面編(前編)
後退る一護をすかさず阿散井が後ろから羽交い締めにする。突如捕らえられた一護は首を捻り彼を見るが、阿散井はそっと視線を逸らすばかりで何も言わない。ルキアは羽交い締めにされた一護の元へ歩み寄るなり、追加で往復ビンタを食らわせる。
「てめ…」
「何だそのフヌけた顔は!?」
「…な…」
「ちょっと来い!!」
「ちょっ……何だルキアおい!どこ行く気だコラァ!!」
ルキアは赤い手袋を着けて一護の中身を引き摺り出すとそのまま死神化した彼を連れてどこかへ行ってしまった。一護にとって、ここにいる死神たちの中で1番付き合いが長いのは言わずもがな彼女だ。だからこそルキアを信じ、誰も後は追わない。
「…やっぱりこうなったわね。」
「そっスね。全く世話のやける野郎だ…。」
「まァあんだけ腑抜けたツラ見せられちゃああしたくもなるだろうぜ。」
「もう、一護はまだ高校生なんだからあれ位が普通だよ!」
「そーよ、ヘコんでた顔もあれはあれでソソるもんがあったわよ♡」
「どこが!?ソソるもんなんて無いね!!」
「いや別にアンタに同意求めてないわよ弓親。」
「じゃあ誰!?誰に同意求めてんの!?一角!?」
「なんでだバカ野郎。」
「普通に考えてみなさいよ、ゆうりに決まってんでしょ。」
「ふふ、思春期らしく悩む一護はちょっと可愛いよね。」
口元に手を添え楽しそうに笑うゆうりの声に日番谷の堪忍袋の緒が切れる。ただでさえ喧しい面々を引き連れているというのに、加えて彼女から肯定の言葉が出て来れば苛立ちは募るばかりだ。
「おいお前ら!ちょっとは静かに…ーー」
「おい…あれ見ろよ…黒崎どうしたんだ…?さっきの女にシバかれてからぐったりしてんぞ…」
「白目剥いてないか…?」
「おーい…黒崎大丈夫ー…?というかゆうりアンタ知り合い…?それとも脅されてんの…?」
「あー…えっと……お、脅されてます。」
「何でだよ。」
「あいたっ!冗談ですって…。」
視線をさまよわせた後、今まで現世で積み上げて来た信頼を守らんとばかりに嘘を吐くゆうりにすかさず斑目がツッコミを入れると同時に頭を軽く叩く。
「叩いた!ヤベーぞおい…黒崎も死んでんじゃねーのかアレ…!?」
「やっぱヤベー連中だよあいつら…赤い髪だし…」
「……。」