第13章 破面編(前編)
「お前はコイツの仲間、だったのか…?」
「仲間かどうか聞かれたらそうとも言えるし違うとも言えるかな。」
「せやで、オレの初恋の人やから手ぇ出さんといてや。ゆうり、移動すんで。」
「うん。」
「ちょ、ちょっと待ってくれ!俺も…!」
「ごめんね一護。一護とは明日話したいことが有るの。真子とは2人で話をさせて。」
それだけ言うと彼女らは一護の静止を無視して、どよめきを残す教室を後にする。向かった先は学校の何処でもない。かつて彼女らが共に過ごして来た家だった。誰の邪魔も入らず、誰に会話を聞かれることもないその空間は2人にとって好都合だ。平子は椅子に腰を掛け、ゆうりは寝具へ腰を降ろし向かい合う。
「…皆も元気?」
「おう、全員ピンピンしとるわ。最後に会った時と何も変わっとらんで。」
「ひよ里ちゃんが騒いでるっていうのは?」
「あ〜…一護をコッチ側に引き込みたいんやけど、難儀しとってなァ。お前にも手伝って欲しいねん。友達なんやろ。」
「友達だけれどそればっかりはなぁ…。」
「あのまま何もせず放っといたらアイツは死ぬって言うてもか?」
彼の言葉に瞠目する。嘘をついている目には見えない。そもそも彼は今まで面倒な嘘をついた事など無かった。平子は両膝に肘を置き、身体をやや前のめり気味に倒して脚の間で指を組みながら話を続けた。
「えぇか、アイツの中の虚は今一護を喰おうとしてる。1度喰われたら終いや、身体は虚に乗っ取られて2度と出ては来れん。オレらは虚の抑え方も、力の使い方も知っとる。悪い話や無いやろ?」
「それをそのまま一護に話したら?」
「それでウンとは言わんから難儀しとるんやって、思春期の男は面倒いわァ!」
「ふふ、難しい年頃だからね。…何より他の人と違う事への不安だったり、虚が大きくなって行くことへの恐怖とか……あと胡散臭い関西弁の男が信じられないとか色々有るのかも。」
「誰が胡散臭い関西弁やねん。無理矢理連れ出そうとしとるひよ里よりはよっぽどマシやろ!」
「…なるほど、ひよ里ちゃんが焦れて怒ってるのね。一護に真子の話を聞くように説得する事位は出来ると思うわ。けれど結構頑固な所が有るから上手くいくかはどうか。」