第12章 五番隊隊長就任編
「喜助はね、本当に頭がいいの。先を見通す力も凄いし、戦うと強い。この前初めて戦ってる所を見たけれど、元々手負いだったとはいえ無傷で破面を退けちゃうし。それに、喜助は穿界門だって作れちゃうのよ?涅隊長も凄いけれど、喜助も凄いの!」
彼女はまるで自分の親を自慢するような感覚で述べる。その勢いと饒舌さに蟹沢は気圧されるだけだったが、檜佐木は苦虫を噛み潰したような顔をする。相手が男だと分かっているからこそ、素直に聞けない自分がいた。
「…あ、ごめんね。この前の事思い出したらつい熱くなっちゃって。」
「ううん。ねぇ、ゆうりちゃんは破面と遭遇したんでしょ?ゆうりちゃんでもびっくりするくらい強かった…?」
少しだけ聞き難いようにも感じたが、今後戦う事になる相手がどんなものなのか、気にならないと言えば嘘になる。控えめの声で問い掛ける蟹沢にゆうりは1度視線を外して先日の事を思い出す。ヤミーの隣に立っていた、細身の男…ウルキオラと呼ばれた彼は、戦闘に参加していないものの、殺す気で放った喜助の斬撃を素手の1本で弾いていたのだ。それだけで一筋縄では行かない事は分かる。少なくとも、隊長クラスと容易に渡り合える程度には強い。
「どう…かな。強いんだと思うわ。喜助も、ヴァストローデ級が10体以上居たら尸魂界は終わり、って言っていたし。多分、隊長クラスでもかなり苦労する相手なんじゃないかしら。対等かそれ以上か…戦う時は相応の覚悟が必要になると思う。」
「お前でもそう感じるなら、相当厳しい戦いになりそうだな…。」
「ゆうりちゃんも、檜佐木くんも、戦うことになるのかな…。」
「勿論、私も修兵も戦闘に駆り出されるだろうね。でも負けないよ。お祭りに行く約束もしたんだもん!絶対勝とう。」
まるで不安を感じさせないような笑顔を浮かべるゆうり。それにつられて蟹沢の表情も和らいだ。
「それじゃあそろそろ行こうか。あんまり空けとくとみんな心配させちゃうし。」
「そうだな。払っとくから先に出ててくれ。」
「檜佐木くん奢ってくれるの?やっさしい〜!」
「取材に付き合わせたのは俺だからな。これくらい当然だろ。」
「それじゃあお言葉に甘えさせてもらおうかしら。ご馳走様。」
「ご馳走様!」