第12章 五番隊隊長就任編
「好みのタイプが無いならさ、好きな人と行ってみたい場所とかしてみたい事とかは無いの?」
「行きたい場所…そうだな…お祭り。お祭りに行きたい。賑やかで、キラキラしてて、変わった食べ物もいっぱいあって好きなの。」
何年も前、まだ何も知らなかった頃市丸、松本、檜佐木との4人で立ち寄った日の事を思い出す。とても短い時間だったがあの独特な匂いが、空気が今も思い出として残っている。懐かしむように細められた瞳を見て、檜佐木は少し複雑な思いを抱く。そもそも、市丸が関わるとろくな事が無い。それに、帰り際のゆうりの態度と、放たれた市丸の言葉…あれはきっと…。そこまで考えた所で頭を軽く横に振り、考える事を辞めた。
「お祭りいいねぇ、私も行きたいな。今度4人で行ってみようよ!」
「ふふ、いいね!次の夏は4人で行こう!良いでしょ?修兵。」
「…断る理由なんてねぇよ。」
「約束だからね!ちゃんと青鹿くんにも伝えておいてよ、檜佐木くん!」
その為には、確実に藍染を止める必要があるのだが。それぞれ理解はしていたが、口にする事は無かった。
「他に質問は無し?」
「後はそうだな…特技は?」
「料理かな。現世にいる時は自分で作る事が多かったからそれなりにできるようになったよ。」
「へぇ…。」
「ニヤついてるよ檜佐木くん。」
「に、ニヤついてねぇよ!」
「どうせ手料理いいなぁ、とか思ってたんでしょ!」
「修兵って本当に分かりやすくて面白いよね。」
「人をからかって遊ぶんじゃねぇ…!」
そう言うと檜佐木は手に持っていたメモ帳を閉じた。漸く質問も終わり、3人は談笑を続けながら甘味に舌鼓をする。久々に話す同期との会話はとても楽しく、充実しているようで、また会えない時間が長かった分、話も尽きない。
「ゆうりちゃんはまた直ぐに現世に行っちゃうんでしょ?寂しいなぁ。」
「私が1番喜助と親密だからね。行ったり来たりする事になりそうだから、そんなに会えない事もないよ?」
「喜助…って、ウラハラさんだっけ?その人、そんなに凄いの?」
「凄いわ!!」
勢い良く頷くゆうりに蟹沢と檜佐木も少し驚いた。彼女がここまで瞳を爛々とさせる事も珍しい。