第12章 五番隊隊長就任編
「好きな食いもんは?」
「え、なんだろう…餡蜜?」
「じゃあ嫌いな食いもんは?」
「うーん……茄子…かな。こんな事瀞霊廷通信に書くの?」
ゆうりは今日、檜佐木、蟹沢と共に甘味処に訪れていた。青鹿は任務が入っており都合がつかなかったらしい。女性陣は餡蜜を食べながら、檜佐木は片手にメモ帳を持ちながら向かい合う。ゆうりは以前約束していた瀞霊廷通信の中身となる部分を埋めるべく、投げ掛けられた質問に淡々と答えていた。
「こういう仕事に関係ない事の方が意外と知りたがってる奴が多いんだよ。後はそうだな…趣味とかあんのか?」
「無い。」
「即答だね。」
「趣味に割く時間が無かったのよ、鍛錬とでも言っとく?」
「せめて読書にしとけよ、学生時代はよく読んでただろ?」
「確かに好きだけど。鍛錬で良くない?」
「読書にしておく。」
何がそんなにダメなのか、結局メモ帳には読書と書かれゆうりは些か不満げに頬を膨らませた。そんな2人のやり取りを見ながら蟹沢は餡子の乗ったスプーンを咥え小首を傾げる。
「ねぇ、好きなタイプとかは聞かないの?」
「き、聞ける訳無いだろ!」
「異性の?」
「そうそう!そっちの方が興味津々でしょ〜。最近どうなの?ゆうりちゃんは好きな人とか出来た?」
「それを俺の前で聞くのかよ…。」
「居ないよ〜。ほたるちゃんは出来た?」
「私はねぇ…秘密!」
「秘密なの!?聞きたかったのに…!」
まるでいたずらっ子の様に、人差し指を口元に添える彼女にゆうりは肩を落とす。恋をしているのであれば、その話を是非とも聞いてみたかった。
「…それで、好みのタイプとかはあんのか?」
「あっ、結局聞くんだ?」
「書く書かないは俺が決めるけどな。」
「うーん…私より強い人。」
「何百人もの隊士の夢を砕くような回答じゃねぇか、お前今隊長代理だろ。」
「女の子は誰だって守ってもらいたいもの。ねー、ほたるちゃん!」
「ねー!」
見つめ合い仲良く首を傾げる2人に檜佐木は深く溜息を吐いた。その言葉が本音かどうかは分からない。面白半分で言っているだけかもしれない。…心から守られる事を望んでいるというのなら、勿論努力はするつもりだが正直彼女に敵う気はしなかった。