第3章 真央霊術院編
彼女の言葉を聞いた途端蟹沢の表情は一気に歪んだ。ゆうりは頬を赤く染めたまま俯き隠すように両手で顔を覆う。
「友達と思ってたから凄いびっくりして、知らない人になっちゃったみたいで怖くて…その時は泣いたんだけど。」
「そんなことがあったんだ…。」
蟹沢は立ち上がると彼女の隣に腰掛け体育座りをして顔を膝に押し付けるゆうりの頭を優しく撫でた。ゆうりは少しだけ気持ちを落ち着けると、ゆっくりと顔を上げる。
「…恋って難しいね。嫉妬とか私はよく分からないもの。」
「それならさ、図書館行こうよ!」
「図書館?」
「恋愛小説とか置いてあるし、読んでみたら?」
「確かに、読んだらちょっとは分かりそう!」
「オススメの小説があるから紹介するよ。」
「ありがとう、ほたるちゃん。」
漸くゆうりの表情が明るくなった。それから2人は女子特有の恋愛トークに花を咲かせる。特に蟹沢は楽しそうに見えた。
「ゆうりちゃんあんなにモテるのに彼氏とかいらないの?」
「うーん、好きになるっていうのがまだ分からなくて。ほたるちゃんは好きな人とか居るの?」
「私も居ないなぁ。流魂街に住んでた時は居たけど…。」
「ほんと?好きになるって、どんな感じ?」
「私はね、話してると心臓がドキドキして、その人の笑顔を見るだけで幸せな気持ちになるの。あとは…独り占めしたくなる、かな?」
「独り占め…。」
「好きな子が他の女の子と話してるのが嫌なの。これが嫉妬だよ。」
「そっか…そう思える人が出来るかなぁ。」
「出来るよ。ゆうりちゃんにとって誰よりも大切な人。」
「そうだといいな。ほたるちゃんに話してよかった。」
「少しでも解決したなら良かったよ!あ…そういえば、檜佐木くんも怒ってたね…。」
「うん…。」
思い出すなりしゅん、と項垂れるゆうり。見兼ねた蟹沢はカバンから紙を1枚取り出した。それをちゃぶ台に拡げ、一点を指さす。ゆうりもその紙を覗き込んだ。
「檜佐木くんは男子寮の105番に居るみたい。2人で話してみたらどう?」
「二人きりで?」
「そう。私は居ない方が話しやすいと思うし…。」