第3章 真央霊術院編
「檜佐木くん?」
「席戻る。」
それだけ言い残し檜佐木は自分の席へ戻ってしまった。怒ってる理由が分からずゆうりは困惑した表情で蟹沢を見た。彼女もただ、困ったようにゆうりと檜佐木を見比べる。
「…どうして、みんな直ぐ怒るんだろう。」
「みんな…?他に怒ってる人が居るの?」
ポツリと呟いた言葉に蟹沢が耳を傾けた。ゆうりは眉を下げて笑う。
「…ほたるちゃん、後で話聞いてもらっても良いかな。」
「もちろんだよ。」
大きく頷いた蟹沢にゆうりもほっとした表情を見せた。
それから昼休みが終わり午後の授業を終えたゆうりと蟹沢は寮へ戻る。その間檜佐木と話す事は一切無かった。
部屋に戻った彼女らはちゃぶ台にお茶を置き、向かい合う形で座布団に座る。
「…何があったの?」
「…あのね、昔仲良くしてくれてた友達をあの日見付けたの。追い掛けたら誰もいない路地で…久しぶりの再会で私は凄く嬉しかったんだけど、相手は雰囲気ちょっと変わってて…。大人っぽくなっただけかなって思ってたの。」
「男の子?」
「うん、死神の男の子。人が居ない所で話してたら、その…修兵とほたるちゃんと一緒に買い物してた所を見てたみたいで、あんまり男友達作るなって…怒ってた。」
「ゆうりちゃん…それは多分ね…嫉妬じゃないかな?檜佐木くんもそうだけど…。」
「嫉妬?」
「そうだよ!」
ダンッ、と激しい音を立てちゃぶ台に手を付き興味津々といった様子で目を輝かせ身を乗り出した蟹沢にゆうりは少し身を後ろに引く。それでも彼女のトークは止まらなかった。
「いいなぁ、ゆうりちゃん美人だもん。その男の子もゆうりちゃんの事少なからず好いてるんだよ。だから他の男と歩いてる所見てやきもち妬いたんじゃない?」
「好いて……あ。」
そういえば、昔出会った頃に嫁にどうか、なんて事を言われた気がする。あれはただの冗談だと思っていたがまさか本気だったのだろうか。だからキスをして来た…?
「顔赤いよ?もしかしてゆうりちゃんもその子の事好きなの?」
「違うの!けど…その……無理矢理キス、とかされたの思い出しちゃって…。」
「え、キス…?無理矢理…?」