第12章 五番隊隊長就任編
真っ直ぐな瞳を向けられ、日番谷は僅かに瞠目する。彼女は今、五番隊の隊長代理なのだ。卍解が出来るのは頷ける。しかしその能力について知る機会などなかった。
「…冬獅郎にも関わる事だから聞いて欲しい。」
「俺に?」
「私の卍解の能力はね、死者も甦らせる事も出来るの。」
「…は?」
「ずっと悩んでたんだ。部下を…十番隊の隊士を自分で殺してしまって、現世に身を潜めていた時からずっと。彼らを生き返らせて良いのか、って…でも」
「ちょ、ちょっと待て!意味が分からねぇ、どういう事だ?死者を生き返らせるって…。」
「…あ、そっか、冬獅郎は回帰能力についてよく知らないよね。」
突拍子も無い話に、すかさず日番谷が待ったを掛ける。話の腰を折られたゆうりはキョトンとした顔で彼を見ると、片手に緩く拳を作り隻手の掌にポンと打つ。
そして彼女の持つ力、回帰能力について彼に教えた。回道とは全く異なるそれはとても異質に感じたが、井上織姫が近い能力を得ている事を知っていた為、驚きはあれど疑いはしない。
「なるほどな…お前の卍解は、その力が飛躍的に伸びるって事か。」
「そういう事。」
日番谷は俯いた。そして顎に手を添え眉を顰める。
死者を…散った魂魄を元に戻せると言うのなら、あの日殺された草冠も…。
そんな想いが脳裏に浮かぶ。しかしその心情も、事情も知らぬゆうりは黙り込んでしまった日番谷を見て不思議そうに首を傾げる。
「どうしたの?」
「…いや、今はいい。話を続けてくれ。」
「…わかった。私には今、あの日殺してしまった彼らを生き返らせる力が有る。けれど…それって私のエゴでしかないでしょう?鏡花水月に掛けられていたとはいえ、殺してしまった彼らに謝りたい…生きて欲しい。そんなエゴでしかない。」
「エゴ、か…。」
「もしかしたら、彼らは二度と虚なんて化け物と戦う事にならなくて…怯える日々も無くなって、安心しているかもしれない。生きる事を望んでいないかもしれない。それに、今生き返った所で死んだ時からもう何年も経ってる。空白の時を嘆くかもしれないし、勝手に生き返らせた私に憤るかもしれない。そう考えると…力を使うのが怖いの。」
それだけ言うと彼女の視線も地面へと降りていった。日番谷はかける言葉に迷う。