第12章 五番隊隊長就任編
「…いやぁ、あれで帰ってくれて助かった。始解までされたら、流石にこちらの方がちょっとキツかったでしょう。」
「…え、破面は始解もするの!?」
「当然じゃ、奴らは死神の力を手にした虚じゃぞ。ただ悪戯に斬魄刀を引っさげておる訳では無い。それより、井上はどうじゃ?」
「あ、はい!織姫の傷は完全に治りました。まだ眠っていますがその内目を覚ますと思います。チャドは織姫があらかた治してくれてるみたいだから、一護を診ますね。」
「頼みましたよ。ボクらは治癒にそう長けてませんから。にしても…夜一サン、アナタも随分無茶しましたねぇ。」
「…余計な世話じゃ。」
浦原と四楓院の会話の意味は、ゆうりには理解が出来ず小首を傾げる。見たところ、外傷は無いように見えるが…今はそれよりも一護だ。先に戦闘していた彼は、思いの外ボロボロだった。藍染と対峙した時程では無いが、至る所に痣が出来ているし、血だらけに見える。それに、戦闘に負けた悔しさか、それとも別の原因かは分からないが項垂れており普段の溌剌とした様子も無い。
「今治すからね、一護。」
「……悪い。」
瞼を伏せた一護を白い光が包み込む。色々聞きたいことも、話したい事もあった。しかしそれは今は叶わない。ゆうりは彼に霊力を充てながら振り返り浦原を見る。
「喜助、私は一護を治したら1度瀞霊廷に戻るわ。多分既に情報は伝わっているとは思うけど、なるべく早く総隊長に報告しないと。」
「それがいいっスね。こっちの事はボクが何とかしましょ。戻るついでにコレ、総隊長に渡しといて貰えます?勿論、中は見ちゃダメですよ。」
「分かった。」
浦原は懐から書簡を取り出した。
書いている暇など無かったハズなのに、一体いつどこで準備をしていたのだろう。…いや、そもそも総隊長から連絡があることも、その内容すらも彼はある程度予測していたのかもしれない。喜助は知識も先見の明もずば抜けた男だ。それをこの数年間、傍で見て来たのだから何となく分かる。一護の治療を終えてソレを受け取り、穿界門を開いて地獄蝶を従える。
「…なんだかまたすぐ会う事になりそうな気がするけれど…夜一さん、喜助。皆のことよろしくね。」
「あぁ、またの。」
「おや、察しがいいッスねぇ。」
浦原はひらりと手を振り、ゆうりも返して現世に背を向けるのだった。
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