第12章 五番隊隊長就任編
「…へへ…ざまあ…みやがれ…粉々だぜ…俺の虚閃をこの距離でかわせるワケ…が…!?」
土煙が晴れると、そこに骸は無い。彼女達の前には1人の男が斬魄刀を構えて立っている。そしてヤミーとその男…浦原との間の地面は横に大きく抉れているようだ。
「な…なんだてめぇ…!何しやがった…!?どうやって虚閃を…」
「ご覧の通りっス。弾くとヨソが危ないんで同じようなのをぶつけて相殺させてもらいました。」
「何だと…!!」
「信じられないならひとつお見せしましょうか?
啼け"紅姫"。」
浦原が斬魄刀を構え、下から上へ向かって振り上げると赤い斬撃がヤミーに向かう。右腕を無くし、四楓院による打撃まで受けていた彼は咄嗟に動く事が出来ず血走った目でその斬撃を見た。
が、それはヤミーを斬る事無く1歩手前でバチン、と激しい音を立て相殺された。まるで先程、浦原がゆうり達を守ったように。ウルキオラが間に割り込み、素手で斬撃を弾いたのだ。
「!」
「ウル…キオ…ラ…」
致命傷を負う事無く済んだヤミーが声を上げた刹那、ウルキオラは無表情のままその手を横に薙いで僅かに安堵していた彼の腹を手刀で貫く。
腹を殴られたヤミーはぐらりと身体が揺れ、そのまま膝をついた。
「な…何…しやが…る…」
「バカが。頭に血を昇げ過ぎだヤミー。こいつらは浦原喜助と四楓院夜一、染谷ゆうりだ。お前のレベルじゃそのままでは勝てん。退くぞ。」
ウルキオラは、ヤミーの血がついた手の指先で何も無い空間をトンと叩く。するとまるでそこに元々扉でもあったかのように空間が上下に割れた。奥に何があるかは見えない。しかしあの先はおそらく、虚圏に繋がっているのだろう。
「…逃げる気か?」
「らしくない挑発だな。貴様ら3人がかりで死に損ないのゴミ2匹守りながら俺と戦ってどちらに分があるか判らん訳じゃあるまい。差し当たっての任務は終えた。藍染様には報告しておく。貴方が目をつけた死神もどきは、殺すに足りぬ塵でしたとな。」
それだけ言い残し、ウルキオラはヤミーを連れて虚圏へと帰って行った。重苦しい霊圧が消え、漸く緊張が解ける。
ゆうりは兎に角驚きが隠せなかった。破面達の霊圧の高さは勿論、初めて戦闘する浦原と四楓院の姿を見たのだ。先程は隊長格より強さは上だと言っていたが…どうにもそうは見えなかった。