第12章 五番隊隊長就任編
「既に井上達が向かっておる…が、ヤツらでは到底敵う相手では無い。今は急ぐぞ。」
「…はい……!」
何も出来ない歯痒さが募り唇を噛む。本来救うべき魂魄から目を背けるのはとてつもない罪悪感だった。それでも、魂魄を抜かれてしまった今、彼らにしてやれることが無い。兎に角織姫達に加勢をしなければ、大切な友人まで失うことになってしまう。それだけは許せない。ただその一心で彼女らの元へ向かった。
走る間も霊圧探査で様子を伺うと、一足早く辿り着いたであろう佐渡の霊圧が著しく萎む。そしておそらく次に辿り着いたであろう一護の霊圧は矢張り禍々しさが増している。死神というより寧ろ虚の方が近いとさえ感じる程だ。
「喜助……!一護の霊圧が…!」
「かなり揺れてますね。恐らく、虚が黒崎サンの身体を乗っ取ろうとしているんでしょう。ゆうりは治療をお願いします、破面はボクと夜一サンが見ますんで。」
「分かった。」
現場に着く直前、井上の霊圧が萎み、一護までもが徐々に落ちていくのを感じた。焦りに嫌な汗が滲み出す。
漸く辿り着いたそこは現世にいながらも、さながら地獄のような光景だった。周辺には夥しい数の人が倒れ、井上も佐渡も倒れている。一護は、自分より何倍も巨体である男…破面に殴られているようだった。
浦原は走りながら斬魄刀を抜く。
ゆうりは先程の彼の言葉を信じて一護の元へは向かわず、織姫の元へ駆けた。
「終わりだガキ!!!潰れて消えろ!!!」
大男が一護に向けて血塗れの腕を振り上げる。その瞬間、浦原と四楓院が彼らの間に割り込む。浦原は斬魄刀の鋒を大男に向け、拳を防ぐ真っ赤な盾を張った。
「…あ!?」
「どぉーーもーー♡遅くなっちゃってスイマセーーン、黒崎サン♪」
拳を防いだ盾はパァン、と音を立て割れるようにして消えた。大男…ヤミーは突然割り込んで来た2人を心底不快そうに顔を顰めて見下ろす。
「…何だ!?次から次へとジャマくせぇ連中だぜ…割って入るって事は…てめぇから殺してくれって意味で…良いんだよなぁ!?」
そう言ってヤミーは再び腕を上げ、振り下ろした。が、彼の手が何かを捉えることは無い。浦原の隣に立っていた四楓院が目にも留まらぬ素早さで彼の腕を掴み、頭から投げ飛ばす。反応する間も無く体を地面に叩き付けられたヤミーはその衝撃に目を見開いた。