第3章 真央霊術院編
市丸と再会してからの数日。ゆうりはずっと心ここに在らずという具合にぼんやりとすることが増えた。明らかに様子のおかしい彼女に蟹沢と檜佐木も声を掛けづらく困り果てる。
「なんで最近ボーッとしてるんだ、あいつ。」
「わかんない…。この前買い物した後、帰って来てからずっとあんな感じだもん…。」
席に座り頬杖をついて外を眺めるゆうり。あれから考え続けていた。何故市丸が接触して来たのか、あんな事をしたのか。そして、浦原に何があったのか。
「はぁ…。」
答えは一向に出て来ない。
檜佐木と蟹沢は顔を合わせると彼女へ近付き檜佐木は空いている隣の席に座り蟹沢はゆうりの目の前にしゃがんで両手をついた。
「お前最近ずっとため息ついてるだろ。何かあったのか?」
「え?そうだった…?」
「そうだよ!お買い物してから全然元気無い…。」
「あはは…ごめんね、ちょっと考え事してて。」
無理矢理作ったような笑顔を浮かべるゆうりに檜佐木は顔を顰める。彼女のこんな笑顔を見たくは無かった。いつも通り、こちらがつられそうになる位屈託のない笑顔でいて欲しい。
「…無理して笑うなよ。何があったか俺たちに話す気はねェのか?」
「あ……えっと…。」
少しばかり不機嫌な表情の檜佐木にゆうりは言葉に詰まった。どう話せばいいのか、相談すればいいのか分からない。あの時の事を彼らに話すのが何より恥ずかしい。詳細を思い出すだけで顔が熱くなる。
白い肌を朱に染め狼狽える彼女に蟹沢は小首を傾げ、まるで恋をしている少女の様な反応を見せるゆうりに檜佐木は更に気が落ち込む。
「ゆうりちゃん、もしかして好きな人居るの?」
「好きな人なんて居ないよ。友達として好きな人はいっぱい居るんだけど…。」
「……ならなんで顔赤くして狼狽えてんだ。」
「そ、それは…。」
核心を着いた途端言い淀むゆうりにただ苛立ちが募った。何があったのか話してくれない事もそうだがそれより、彼女にこんな顔をさせる奴が居るという事に腹が立つ。
檜佐木は深くため息をついた。椅子から立ち上がり、彼女を見下ろす。
「話す気が無いならいい。無理には聞かねぇよ。」