第12章 五番隊隊長就任編
ゆうりは懐から機密事項と書かれた書簡を取り出し、彼に差し出した。浦原はそれを受け取ると迷わず封を破り中の紙を取り出す。中身に目を通す彼の横顔は真剣そのものだった。
内容については彼女自身も預かり知らぬものだった為、気にならないと言えば嘘になるが覗く訳にもいかない。ただそのもどかしさから、そわそわと視線を彷徨わせる。
「……なんて書いてあったか、」
「は、教えられませんね。」
「…でしょうね。」
教えて欲しい、と言う前にバッサリと断られてしまい肩を落とす。浦原は鬼道を用いてその紙を燃やし、灰へと変えた。
「さぁて、ゆうりももう少しこちらでゆっくりしていくでしょう?ウルル、ジン太!庭の掃除は大丈夫なんで中でお茶の用意だけしてください。終わったら遊びに出て来ていいですよん♡」
「はい…。」
「おう!」
「そこまでのんびりはしないからね?これでも私、代理とはいえ隊長なんだから。」
「分かってますって、そう長々と引き留めたりはしませんよ。本音を言えばこのまま現世に残って欲しいんですけどね。」
「…それはどういう意味で?」
「それは勿論ボクのエゴ…と言いたいところですけど、危険なのは尸魂界よりコチラになりそうなんで。」
「……そう。」
浦原は口元を扇子で隠し目を伏せる。彼がそう言うのも頷けた。空座町は重霊地だ。藍染が狙うのは間違い無くこの町だろう。そうなれば戦いの場は自ずと尸魂界から現世に移る筈。だからこそ総隊長は、現世に住まう浦原とコンタクトを取るよう試みているという事は、ゆうりも容易に想像がつく。
部屋に入るとそこも相変わらず何の変わりもなかった。質素なちゃぶ台が置いてあり、ウルルがお茶を用意しジン太が煎餅を乗せた皿を運ぶ。浦原からの指示をこなした彼らは、早速とばかりに外へと走り出て行った。
残されたゆうりと浦原は向かい合い、のんびりと茶を啜り、まん丸な煎餅を手に取り齧り付く。
「これから学校に向かうんでしょう?それなら義骸使います?」
「ありがとう、喜助が作ってくれたやつが1番馴染むから向こうでは貰わなかったの。」
「嬉しいことを言ってくれますねぇ。久々の尸魂界はどうでした?」