第12章 五番隊隊長就任編
ゆうりが小さくなった出来事から数日が経ったある日。彼女は総隊長である山本元柳斎重國の命により現世へ足を向けていた。穿界門を潜り、拘流が壁を作る一本道を地獄蝶を連れただ走る。やがて出口が見えて来た。現世の地に再び足を着けるのは当然、あのルキア救出戦の日以来である。
「着いた…空座町。もう学校は始まってるんだったかな。折角だし一護達にも会ってから戻ろ……ん?」
空座町に点在する霊圧の中に1つ、知ってはいるがこの空座町では馴染みの無いものが混ざっていた。それに、一護の霊圧にもやや違和感を感じる。
この霊圧は…真子のものだ。それも、おそらくは学校に居る。けれど何故空座町に…?一護の霊圧は、虚のような荒々しさが大きくなって来ている…気がする。
疑問が頭の中で渦を巻く。気にはなるが今はそれよりも任務が先だ。何せこれは総隊長直々の命なのだから。ゆうりは戸惑いを見せながらも踵を返し、目的地である浦原商店へと向かう。
「おっ、来たぜ!」
「おかえりなさい…。」
「ジン太!ウルル!元気だった?」
店に着くと店先ではジン太とウルルが箒を手に持ち落ち葉を掃いていた。ゆうりが来る事を知っていたかの様な口振りだったが、特に気にせず彼女は身をかがめて2人の肩に腕を回して抱き寄せる。
「うわっ、なんだよ、店長がうるせぇから辞めろ!」
「キスケさんがそろそろ来る頃だって言ってたから待ってたの。」
「あら、随分と察しがいいのね。今は中にいるの?」
「もちろんですよん♪おかえりなさい、ゆうり。」
「喜助!」
店の奥から聞こえた声にゆうりは顔を上げる。いつもと変わらない格好で、笑顔を浮かべる彼に瞳を細めるとジン太とウルルを解放する代わりに浦原の元へ駆け付け広げられた腕の中へと飛び込んだ。
ふわりと靡く白い羽織に浦原は残念そうに、しかし表情は柔らかく息を吐く。
「あーらら、本当に五番隊の隊長になってしまったんですねぇ。夜一さんから聞いていましたけど、いざこうして姿を見てしまうと寂しいものです。」
「私もまさかこんな事になるとは思ってなかったわ。再会出来たのは嬉しいけれど…まずはコレを。」