第12章 五番隊隊長就任編
「了解しました!」
壺府は持っていたお菓子の袋を置いて急ぎ指示をこなしていく。床に落ちた煙草を拾い上げ、携帯灰皿の中で火を潰す阿近を見て鵯州はゲラゲラと笑う。
「お前、バレたら始末書物だぞ。」
「うるせぇな、分かってる。要は今日の出来事を全員忘れちまえば良いんだろ。」
「何か手でもあんのか?」
「当然だ、俺は十二番隊だぞ。」
そう言って彼は口角を吊り上げ笑った。
数分後、無事伝令が届いたのか音もなく朽木白哉は十二番隊へと現れる。子供を抱いたまま、随分長い時間逃げ回っていた様に感じるが流石隊長とでもいうべきか呼吸すら乱れていない。
阿近は後頭部を掻き申し訳無さそうに頭を軽く下げた。
「すみません、朽木隊長。こんな事に巻き込んでしまって…。」
「よもや私を下らぬ戯事に付き合わせる等…他隊とはいえ二度目は無いぞ。」
「はは…肝に銘じておきます。楽しかったか?ゆうり。」
「うん!ただいま、あこん!」
腕の中に居る彼女へ顔を寄せ問い掛けるとゆうりは屈託のない笑顔を見せ、阿近に向けて両腕を伸ばした。白哉は少し躊躇うが、渋々彼に少女を引き渡す。
「またね、びゃっくん!大きくなったら迎えに行くね!」
「…その言葉、ゆめゆめ忘れるな。」
片手を振り上げブンブンと元気よく振る様に白哉は無表情のまま踵を返し隊舎を出ていく。残された阿近は眉を寄せ、抱っこしたゆうりの顔をジッと見詰めた。
「…おい、迎えに行くって何の話だ。」
「びゃっくんがね、大きくなったら私をお嫁さんにしてくれるって!」
「はぁ?なんて約束してんだお前。辞めとけって。」
「どうして?」
「どうしてって…」
言葉に悩んでいると、近くで見ていた鵯州、壺府がニヤニヤ笑いながら見てきている事に気付く。阿近はバツが悪そうに表情を歪め、2人から背を向けた。
「とにかく、俺の部屋行くぞ。疲れただろ、甘いジュース用意してやったから。」
「ほんと?やったー!」
ジュースにつられ、彼の返答から興味が移ったのか上機嫌になったゆうりを連れて自室に戻る。彼女を床へ降ろし、作っておいた薬をオレンジジュースに混ぜてコップへ注いだ。
「ほら。」
「ありがと!」