第12章 五番隊隊長就任編
「シロくん、鬼ごっこしよ!」
「鬼ごっこ?」
「私が逃げるから、捕まえて!!」
「俺から逃げられると思ってるのか?その姿で。」
「私だって足速いもん。男の子にも、かけっこで負けたこと無いんだから!」
ふふん、と自慢気な顔をする彼女を鼻で笑う。元の姿のゆうりならばともかく、これ程までに幼いゆうりに負ける気はしない。そもそも霊力の使い方すら知らぬ筈だ。そんな彼女に負けるなんて有り得ない。
「…少しだけだからな。捕まえたら終わりだ。大人しく隊舎の中で遊べよ。」
「わかった!」
「隊長、良いんですか?」
「大丈夫だろ。どの道今のこいつは霊圧を消すことも出来ない。見失う事もねぇからな。」
「それもそうですけど…。」
「じゃあ逃げるね!よーい、どん!」
シュン、と音を立てゆうりの姿が一瞬にして消えた。松本、日番谷共に口を小さく開き固まる。この移動速度は、瞬歩であった。まさか、子供である彼女が瞬歩を使える?記憶は死神になる前に戻っているというのに。
「た…ッ、隊長!本当に捕まるんですか!?」
「捕まえるしかねぇだろ!なんでアイツ瞬歩で移動出来るんだ!!」
「知りませんよそんなの!早く探さないと、瀞霊廷から出ちゃうかもしれませんよ!」
「分かってる、さっさと捕まえるぞ!」
これは、思っていたよりずっと本気の鬼ごっこになりそうだ。慌てた2人は急いで彼女の霊圧を追って十番隊の隊舎を出るのだった。
一方ゆうりはといえば彼らの心労等知るはずも無く、器用に屋根を伝い、地を駆け、誰の目に留まる暇も無いまま瀞霊廷内を走り回っていた。見たことの無い姿をした死神、歩いたことの無い土地に不安より好奇心が勝る。日番谷を引き離した事を察すると一度速度を緩め、気もそぞろのまま辺りを見渡し歩いた。
「私と同じお洋服着てる人ばっかり…わぷっ!」
角を曲がった途端何かにぶつかる。壁程固くないし痛くもない。足を止め、顔を上げると一人の男と目が合った。流れるような美しい黒髪。スラリと背は高く肌は白い。端正に整った顔は何かに驚いている様で、瞳が見開かれている。
ゆうりの胸がドキリと高鳴った。カッコイイ。そんな感情が芽生える。
「ゆうりか…?」
「あ……あのっ!なんてお名前ですか!」
「何?」