第12章 五番隊隊長就任編
瀞霊廷内を歩いていれば当然視線は2人に集中した。彼女は現世の記憶の方が強く残っているのか瀞霊廷の敷地や死神達の服装を物珍しそうにキョロキョロしている。
「どこ行くの?」
「お前と遊んでくれる人のところ。」
「あこんは遊んでくれないの…?」
「俺はお仕事。」
「……そっか…あこんも、お仕事なんだ…。」
しゅん、と肩を落とす。とても寂しそうな表情に見えた。
もしかして、普段両親はあまり遊んでくれなかったのだろうか。だから構われてこれ程までに嬉しそうにしているのか…?
妙に胸がザワついた。小さくなったとはいえゆうりはゆうりなのだ。彼女に辛い思いは出来ればさせたくない。しかしこの姿を治す薬も必要である。脳内で起こる葛藤に我ながら子煩悩になりそうだと感じた。
「…まぁこんだけ可愛いけりゃ甘やかしたくもなるだろ。」
「んー?」
自分に向けての言葉とは思わなかったのか、彼女はニコニコと笑い小首を傾げる。その純朴さがいやに眩しい。
そうしてる内に漸く十番隊へと辿り着く。門を潜り、執務室へ足を運んだ。
「十二番隊、阿近です。日番谷隊長、松本副隊長は居ますか?」
「阿近?珍しいな。」
「入っていいわよー。」
「失礼します。」
ガラッ、と扉を横にスライドさせる。松本はソファに寝転び雑誌を読んでいた。日番谷は執務机に向かい相変わらず仕事に勤しんでいる。全くどっちが上司が分からない光景だ。
そんな2人が扉へ顔を向けた。十二番隊の者が訪れるのもまぁ珍しいが、それに加え男は小さな少女を抱いている。日番谷はポロリと筆を落とし、松本は口を開いて固まった。
「…ちょっと、何よその子!ゆうりそっくりじゃない!!」
「俺とゆうりの子ですから。」
「嘘、あんた達いつの間にそんな関係だったの…?」
「……何抜かしてんだ、霊圧がまんまゆうりだろ。松本も信じるな。」
「まぁでも近い将来そうなる予定なんで。」
「ほう、それはどういう意味だ…?」
バチバチと視線が交わる男性陣を横目に松本はソファから足を降ろし彼らの元へ近寄った。初めて見る人物にゆうりは阿近の首の後ろに腕を回しピッタリとくっ付く。
「だれ…?」
「あら、まさか記憶までないの?あたしは乱菊。あっちの男の子は冬獅郎くんよ。」