第12章 五番隊隊長就任編
「……へ?な、なにこれ?」
「普段の仕返し。」
視線を持ち上げると彼と目が合う。悪戯めいた笑顔を浮かべる男にゆうりはキョトンとするが言葉の意を察するなり肩の力を抜き、膝を曲げ寝転ぶ。阿近の膝にゆうりが頭を乗せる…今までとは真逆の立場だ。
昔は彼が無理して研究に没頭し、睡眠不足に陥るなり此処へ無理やり引き連れ寝かせたのを思い出す。それが今度は逆になっているかと思うと少し可笑しくて静かに笑った。
「ふふ……阿近の膝枕は硬いね。」
「男なんだから当たり前だろ。…ここならゆっくり寝れるだろ。」
「…どういう意味かな。」
「知ってるぜ、今は殆ど隊舎に篭って過ごしてるんだろ。……大方、藍染の部屋に極力戻りたくなくて無理してるって所か。」
「…!!」
彼の言葉にハッと目を見開く。無意識に膝に乗せていた手に力が篭もり服をキュッと握った。まさか図星をつかれてしまうとは思っていなかったのだが。
「…なんで分かるの?修兵にもバレなかったんだよ。」
「お前が俺のところに来る時なんて大概嫌な事があった時と困った時だけだろ。会いに来いって言ってんのに。」
「うっ…。」
「まぁいいや。そんなに嫌ならさっさと改装すれば良いだろ。」
「私は仮の隊長だし、五番隊の子たちはあんな男でも尊敬していた子達が多いから無理だよ。」
「浦原さんは他の隊士を無視して自分がやりたい様にやってたぜ。お陰で俺や局長がこうして蛆虫の巣から出て来れたわけだしな。仮だろうが何だろうがお前は今隊長だろ。自分が思うようにやればいい。」
「軽く言ってくれちゃって…。……なんか、暖かくて眠くなってきちゃった。少し、このまま膝借りるね。」
「そうしろよ、寝てる間に良い薬考えてやるから。」
ぽかぽかと暖かい陽射しに、頬から伝わる程よい体温が睡魔を呼び寄せる。彼の大きな掌が子供をあやす様にゆったりと頭から背中に沿って何度も優しく往復した。その手付きがあまりに心地よくゆうりは静かに眠りにつく。
規則正しく呼吸を刻む姿を見て阿近は手を止め、懐から煙草を取り出し一本口に咥え火を付けた。煙を肺いっぱいに吸い込み空に向かって吐き出す。