第12章 五番隊隊長就任編
「…そうだ、乱菊さんといえば伝言頼まれてたんだった。」
「伝言?」
「今週末、女性死神協会で会議があるから出席しろって。」
「女性死神協会かぁ…確か白哉の屋敷に有るんだよね、会議室…。」
「は!?朽木隊長が許したのか?」
「そんなわけないでしょ、勝手に作ったみたいよ。」
「はー…女は肝が据わってんな…。」
「バレたら怒られるから内緒ね。」
ゆうりは徳利から酒を徳利に注ぎ、少しずつ煽る。檜佐木も残りの酒を注ぎ切るとゆっくりと口にした。下手な気を使う必要が無く、静かに過ぎていく時の流れはお互い心地よく感じた。
「またほたるちゃんや青鹿くんも誘って、4人で呑みたいね。」
「そうだな、特に蟹沢の奴は会いたがってるだろ。」
「そうだったら嬉しい。現世で過ごしてる時もずっと皆に会いたかったから。」
「馬鹿、それはこっちのセリフだ。死んだって伝令が来た時、どんだけ絶望したと思ってんだよ。」
「実際死にそうだったんだよ!ギンと喜助やテッサイさんが居なかったら多分…私はもう居なかった。」
当時の事を思い浮かべ、瞳を細めた。あの時命を繋ぎ止められたのは間違いなく、市丸と浦原商店の面々のお陰だ。特に、市丸には幼い頃から何度も心ごと救われているというのに、自分は彼に何も返せていないまま、袂を分かつ事になってしまった。それがとても心苦しい。
瞳が揺らぐ彼女を見て、誰のことを考えているのか何となく察した檜佐木は己の感の良さを恨み苦々しく表情を歪める。
「…顔にまだ寂しいって書いてあるぞ。」
「……皆、帰ってきたらいいのにね。喜助も、藍染さん達も、真子や拳西さん達も…。」
またコイツは、知らねぇ男の名前をホイホイと…。
複雑な心境に囚われる中彼女は片手で目を擦りうつらうつらと船を漕ぎ始めた。見兼ねた檜佐木がゆうりの肩へ腕を回し身体を引き寄せ支える。
「おい、寝るならちゃんと布団で寝ろよ。俺も戻るから。」
「一緒に寝よう…。」
「は…?な、ちょ……!」
欠伸を零したかと思えば二の腕を掴まれそのまま床へと倒れ込む。勿論布団も枕も何も無い、まっさらな畳だ。ゆうりは両瞼を降ろしたまま彼の死覇装をキュッと握った。