第12章 五番隊隊長就任編
短い言葉で返事を返し猪口を差し出した。ゆうりは徳利の首を摘み色の無い日本酒を波々注ぎ、己の分も注ぐ。お猪口同士を軽くぶつけると陶器の小気味いい音が響いた。
「何か用事があって来たんだっけ?」
「あぁ。九番隊って瀞霊廷通信も担当してるだろ?次の記事で、ゆうりの特集組もうと思ってるんだ。結構な期間こっちに居なかったし、お前を知らない死神も多いからな。」
「ふふ、確かに…20年以上もいなかったら時の人になるわよね。全然構わないけど、私は何すればいいの?」
「基本的な記事は俺が書くし、ゆうりは特に気張って何かしなくても大丈夫だ。後は簡単に質問考えて来るから、それに答えてくれ。」
「スリーサイズとか?」
「そんな事書けねぇよ!」
「冗談だよ、冗談!相変わらず修兵は面白いね。」
顔を俄に朱に染め声を荒らげる檜佐木を見て無邪気に笑う。酒が入っているせいかいつもより調子の軽い態度で揶揄うゆうりに、彼は頬を掻く。
「ったく……写真も撮るからな。また整ったら連絡する。」
「写真かぁ…隊長羽織りを着て撮るのってなんか気恥しいな。自分でもまだ見慣れないや。」
「そうか?寧ろお前が隊長に選ばれるのは妥当だろ。そもそも、藍染と対等にやり合った時点で総隊長はゆうりを隊長候補として挙げるつもりだったと思うぜ。」
「私もそうだと思う。あ、このチョコ食べる?中にいちごのソース入ってて美味しいの。」
重苦しい話題を避けるように、ゆうりはお盆に乗せられたチョコレートの包みを開いた。片手で頬杖をつき、少し大きめのハート形をしたソレを指先で摘むと、檜佐木の唇へ押し当てる。そして小さく口を開き眦を緩めた。
「ほら修兵、あーん。」
「……お前、俺が戸惑うって分かっててわざとやってるだろ。」
「バレちゃった?」
彼女は悪戯がバレた子供みたくおどけて笑う。酒気を帯びた白い頬を赤く染め、笑顔の幼さの中に何処か色気が有る様に見えて密かに喉を鳴らした。
檜佐木は一拍間を開けてチョコレートを持つゆうりの手首をガシリと掴む。
「修兵…?」
「ゆうりが先に仕掛けて来たんだからな。文句言うなよ。」
「え……わっ。」