第12章 五番隊隊長就任編
五番隊隊長を務めることになったゆうりは、かなり慌ただしい日々を過ごす羽目になっていた。何十人も居る隊士達の名前や顔を覚え、現世から送られてくる調査書を纏め、勿論部下たちの鍛錬も行う。副隊長の居ない今手伝える者も居らず、全ての仕事が彼女に降りかかり朝から晩まで働き詰めの毎日だった。
「あーー今日も疲れた!!」
時刻は日付を回った頃。漸く一段落着いた彼女は筆を置き背もたれに身体を預け大きく伸びをする。凝った肩を回し、天井を眺めた。
隊長である白哉や冬獅郎はこれだけの仕事をこなしてたんだなぁ…そりゃ副隊長にサボられれば大変だわ…。
阿散井は兎も角松本は比較的その気がある為些かの同情を覚える。そろそろ部屋に戻ろうかとしたその時、扉の外からノックが聞こえてきた。
「はい、どうぞ。」
「お疲れ。」
「あ、修兵!お疲れ様。」
訪れて来たのは真央霊術院の同級生であり、現九番隊副隊長でありながらゆうりと同様に隊長代行権限を与えられた檜佐木だった。まともに顔を合わせるのは隊首会以来だ。彼は執務室の扉付近からそのまま声を掛ける。
「こんな時間まで仕事してるのか?忙しそうだな…。」
「修兵だって酷い顔してるよ。クマできてる。」
普段通りの会話をしてはいるものの慣れぬ仕事に日々の疲労が溜まっているのか互いに何処か覇気がない。ゆうりは己の眼下を指先で軽く叩き笑った。
「お前も似たようなもんだよ。まだ終わらないのか?」
「ううん、今日は切り上げようと思ってた所。」
「あ、悪い。じゃあ日を改めた方が良いな。」
「いいよいいよ、そんな気を遣わないで。折角だし部屋で呑みましょう。」
彼女は首を小さく左右に振り執務机に両手を置いて立ち上がった。
部屋って…部屋?ゆうりの?呑むって、2人きりで…?コイツ、俺が男だって分かってて言ってるのか?いや、そもそも意識すらされてねェの…?
檜佐木の頭の中で悶々と思考が巡る。そんな彼を他所にゆうり執務室の机の中へ書類を仕舞い、扉へ駆け寄った。
「部屋といっても藍染が過ごしてた時と全く変わってないんだけどね…。」
「元々あった自分の部屋には帰ってないのか?」
「うん。ウチは今副隊長が居ないからね。何かあった時離れてると困るでしょう?だから、こっちで過ごしてるの。」