第11章 尸魂界潜入編
「一護は現世で普通の男の子として生きて来た。白哉は貴族として他の死神達の規範となる様周りから常に重圧を受けて厳しく育てられて来た。育ち方に大きな違いが有るんだから互いの気持ちが分からなくて当然だよ。…でも白哉は最後、掟と戦う事を選んだんでしょう?遠くから見てたわ、ルキアを守った所。掟を守る事と掟そのものを変える事…どちらが良いのかは私には分からない。けれど、愛した者との約束を選び、身を呈して妹を守る姿はとても素敵だったわ。」
「そうか…。」
頭に乗せられていた手の力がほんの僅かに緩んだ。ゆうりは身体を起こし、彼の瞳を見詰める。話したいことがあったのは白哉だけでは無い。彼女も、ずっと言いたいことがあった。
「白哉。十番隊に移動になった日、最後凄く冷たく当たっちゃってごめんなさい。藍染が一心さんにまた何かしたのかと思って、焦っていたの。貴方には沢山お世話になったのに、あんな言い方をしてしまって…本当にごめんなさい。ずっと謝りたかったの…。」
「…昔の話だ。それに戻ってきたのならば言うことは無い。」
「…本当、優しいのね。ありがとう、白哉。」
漸く謝る事が出来た事にほっとしてゆうりは笑う。
白哉は先刻の一護との激しい戦い、そしてルキアを庇ったことで出来た傷、大量の血を流した事による倦怠感も相まり自然と眠気が襲ってきた。再び瞼を降ろした彼を見てゆうりも踵を返す。
「起こしてごめんなさい。ゆっくり休んで。」
「待て。」
ベッドから離れようとした矢先、手首を掴まれ視線を落とした。止められた理由が分からず目を丸めれば、彼は小さく口を開く。
「…よもや現世に戻る気では有るまいな。」
「え?…心配しなくても、もう何処にも行かないよ。現世に滞在していたのは藍染達から身を隠す為だったから。これからはまた、死神として皆と戦うよ。」
「ならばいい。次に何も言わず消える事があれば、小言では済まさぬぞ。」
「き、肝に銘じておきます…。」
一瞬、掴んでいる手に力が込められ思わず頬を引き攣らせながらも頷くと解放された。不器用な所は本当に変わらない。
そう思いながらもゆうりは部屋を後にした。