第11章 尸魂界潜入編
「もう、何十年も前の話じゃないですか!」
揶揄う様に掌を低い位置でヒラヒラと揺らし過去の彼女の身長を示されると何となく気恥しさを覚え頬を膨らませた。そんなゆうりに彼らは笑う。
「…で、どうするの?隊長やるのかい?」
「やるもやらないも私に選択肢なんて無いですよ…隊長、副隊長を失った五番隊を放置なんて出来ません。」
「はは…やっぱりそうだよなぁ。君ならそう言うと思っていたよ。」
「今度は何かあったらおじさん達に相談しにおいでよ。ボク達仲間なんだからさ。」
「でも…私が何を言っても隊長である彼らを信じたんじゃありませんか?」
「隊長だから全て信じる、だから隊士の申告を無視するというのは、それこそ隊長の判断として間違っているよ。」
「隊長だろうがなんだろうが腹の中で何を考えているのかなんて本人しか分からないからねぇ。」
「そっか…それもそうですね。ありがとうございます、京楽隊長。浮竹隊長。」
彼らの言葉に少しだけ背負い続けて来た重荷が降りた様な気がして、彼女は頬を緩めた。
それから四番隊に到着したゆうりが向かったのは、まず朽木白哉の元である。真っ白な病室で静かに眠るその姿は元々眉目秀麗な事もあって人形の様に美しい。
「まさか私が貴方のお見舞いに来る事になる日が来るなんてね…。」
「……。」
「………。」
指の背でそっと頬を撫でる。その瞬間ピクリと揺れる瞼を見逃さなかった。口を噤んだゆうりはベッドの端に両手を置き覗き込む様にして顔を寄せる。無言で暫し見詰めていると突き刺さるような執拗い視線に白哉の睫毛がゆっくりと持ち上げられた。
「…近い。」
「ふふ、わざとよ。久しぶり白……うわっ!」
「このまま聞け。」
スっと天井に向かい伸びた掌がゆうりの頭に添えられ強引に引き寄せられる。ぽすっ、と彼の胸元に耳を宛てると規則正しい鼓動が聞こえて来た。
「…私はルキアを処刑する事に異を唱える事が出来なかった。朽木家当主として、これ以上規則を破る事は赦されぬと思っていたからだ。」
「…うん。」
「……だが、本心は、分からなくなっていた。緋真と交わした最後の約束…ルキアを守るという約束を破ってまで掟に従うべきなのかと。そんな折り、あの男…黒崎一護という男に出会った。実に奔放な男だ。私には到底理解する事が出来ぬ。」