第3章 真央霊術院編
日も完全に暮れた頃、合流した彼らは夕飯の時間が迫っている事に気が着き帰路につく。
「思ってたより沢山買っちゃったなぁ。」
「可愛い下着いっぱいあったもんね!それにしてもゆうりちゃんがあんなに…胸が大きかったなんて…。羨ましいわ…。」
「おま……そういう事男の前で話すなよ…!」
「…檜佐木くん何想像してるの?むっつり!」
「お前な…!」
真っ赤な顔で鼻を抑える檜佐木に蟹沢は眉を寄せる。ゆうりは笑って聞き流した。随分手元に増えてしまった紙袋を抱え直し前を見ると、ふと足を止める。先に数歩進んでいた蟹沢と檜佐木が突然立ち止まった彼女に気付き振り返ると、ゆうりは呆然とした顔で固まっていた。
「…ゆうり?」
「どうしたの?行かないの?」
2人の声はゆうりの耳には届かない。疑問に思った檜佐木が戻り、彼女の顔を覗き込むとゆうりは突然時が動き出したかのようにハッと肩を上げ手に持っていた荷物を彼に押し付けた。
「…ごめん、修兵。ちょっと持ってて!」
「は!?ちょ…おい!!」
「ゆうりちゃん!」
彼らの静止も聞かず走る。まだ人通りの多い街を、死神達の間を潜り走り続ける。暗くなった街の中で月の光を浴び反射する銀色の髪を見た。後姿だったけれど、あの姿と霊圧は…。
「い、ない……。」
ひとけの無い路地に迷い込む。確かにこの細道に曲がったと思ったのだが、彼の姿はなかった。見失ってしまった…そう思い、肩を落とす。
「見間違いだったのかな…でも、霊圧も感じたのに…。」
しかし、今目の前に居ないことか事実。仕方無く戻ろうと踵を返した瞬間……突然視界が真っ暗になった。
「何!?」
「こらアカンなぁ。相変わらず、警戒心の欠片もあらへん。」
耳元で静かに囁かれる声に身体が固まる。視界を奪ったのは彼の掌だった。懐かしいその声にじわりと目頭が熱くなる。目元を隠す彼の手を掴み、降ろさせようと下へ引っ張ったが動く事は無い。
「ギン…?ギンだよね…?」
「せやで。それにしても、こない簡単にホイホイ着いてきて…。」
市丸は目を覆う掌をゆっくりと外す。視界が開けたはずのゆうりの目の前には誰も居ない。振り返った所で漸く彼の姿を捉えた。