第11章 尸魂界潜入編
「東仙!!!」
突如。倒れていた狛村が身体を上げた。怒りを顕にし、友と信じて疑わなかった東仙へ向けて叫ぶ。全身血だらけになり、それでも声を上げる姿はとても痛々しく、心が痛む。
「降りて来い東仙!!!解せぬ!貴公は何故死神になった!?亡き友の為ではないのか!!正義を貫く為ではないのか!!貴公の正義は何処へ消えて失せた!!!」
「言ったろう狛村。私のこの眼に映るのは最も血に染まぬ道だけだ。正義は常に其処に在る。私の歩む道こそが正義だ。」
「東仙…!」
「…大虚とまで手を組んだのか…何の為にだ。」
「高みを求めて。」
「地に堕ちたか…藍染…!」
「…傲りが過ぎるぞ浮竹。最初から誰も天に立ってなどいない。君も、僕も、神すらも。」
藍染は滔々と語りながら長年使い続けていた眼鏡を外した。右手でそれを容易く砕き、隊長だった時の己と訣別する様に左手で前髪を掻き上げる。
「だがその耐え難い天の座の空白も終わる。これからは
私が天に立つ。
さようなら、死神の諸君。そしてさようなら、旅禍の少年。人間にしては実に面白かった。ゆうり…君は必ず、自らの意志で私の元へ下るだろう。必ずだ。その時を楽しみにしているよ。」
「…本当に執拗い人ね。」
彼は"五"と書かれた羽織を翻し、市丸、東仙と共に空の裂け目へと消えていく。何事も無かったかのように再び綺麗な青空が拡がる。凄惨な迄に荒れ果てた瀞霊廷と、傷付いた死神達だけがただただ虚しく残るのだった。
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